第7章 砂漠を越えて

 

1、三者三様

雄大な砂の海を面前に、反乱軍の戦いが始まる。
二人の盟友
南にレンスターの王子、リーフ
西にイザークの王子、シャナン
彼等の戦いは、一足先に始まっていた。
そして南西、ダーナの町に、もう一人の光が……

オイフェ 「良いですかセリス様。シグルド様があなたに残した大きな遺産、数多くの仲間。
 彼等の危機を見過ごしてはなりませぬぞ」
セリス  「ああ、わかってるよ。役立たずの庶民の中で、貴重な戦力だからね」
オイフェ 「いえ、そうではなくグランベルの皇子、シアルフィの公子として……」
セリス  「わかってるって。僕のために利用できるものは全て利用するよ
オイフェ 「はあ……。育て方を間違えたか……」
レヴィン 「あのシグルド公子とあのディアドラ様の子だからな……」
オイフェ  「はあ……(涙)
   
  そしてはるか南のレンスターでも、同じようにため息をついている男がいた。
彼の名は……
   
フィン  「よいですかリーフ様。キュアン様とシグルド様は盟友でした。
 そしてエスリン様はシグルド様の妹。
   シグルド様の息子、セリス皇子はあなたの従兄妹でもあります。
 かならずや救援に駆けつけてくれるでしょう」
リーフ  「ふーん」
フィン  「思えば私がふがいないばかりにキュアン様、エスリン様を死なせ
 さらにはリーフ様の初陣も敗北となる有様……」
リーフ 「ふーん」
フィン  「かくなる上はこのレンスター城を一度捨て、西の教会に身を隠すべきかも知れません」
リーフ 「ふーん」
フィン   「……。リーフ様。聞いてますか?」
リーフ  「ううん」
フィン  「…………」
ジャンヌ 「いつものことじゃないですか。王子がこうなのは」
フィン 「はあ……。キュアン様。申し訳ありません」
ジャンヌ 「(で、フィンが嘆くのもいつものことなのよね……)」
リーフ   「君だれ?」
ジャンヌ 「え?」
フィン 「リーフ様。しっかりしてください。私が引き取った孤児のジャンヌ。あなたの幼馴染ですよ」
リーフ 「そうだっけ?」
ジャンヌ 「そうじゃなかったら私はなんなのよ……」
リーフ 「幼馴染の名前って確か……アンナだった気がするけど」
フィン 「ナンナです」
リーフ 「フーン。ナンナか」
ジャンヌ 「だからジャンヌだって……」
   
  一方西の塔。バルムンクの剣を探しに行ったシャナン皇子は……
   
デイジー 「よーし、お宝ゲットよ!」
シャナン 「ゲットよ!じゃない。それは私のものだ!」
デイジー 「あぁ? 横取りする気?」
シャナン 「だからもともと私のものなんだよ、その神剣バルムンクは!」
デイジー 「…………」
シャナン 「?」
デイジー  「…………」 
シャナン 「どうした?」
デイジー 「(バルムンクの持ち主→噂のシャナン王子→イザークは解放された
 =地位も名誉も金も思いのまま!!)」
シャナン 「?」
デイジー 「(キュピーン!)」
   
  そしてダーナの街。領主ブラムゼルに舞を披露する娘の姿が。
   
ブラムゼル 「おお、なかなかよい踊りじゃな。誉めて使わす」
レイリア 「どうも」
ブラムゼル 「どうじゃ、ワシのところに来ぬか?」
アレス   「駄目だ」
ブラムゼル 「え?」
レイリア 「なんでアンタが答えるの?」
アレス  「レイリアに手を出すものは俺が許さん!」
レイリア 「アレス、ちょっとこっちに来なさい」
アレス 「なんだ?」
レイリア 「あのね、せっかく私が職にありつけそうなんだから邪魔しないでくれる?」
アレス  「レイリアは俺の妻になれ!そうすれば働かなくてもいい」
レイリア 「ろくな収入も無い傭兵のアンタがどうやって私を養おうっての?」
アレス 「俺は獅子王エルトシャンの子だ。だからそのうち王になる。そうすれば収入は入る」
レイリア 「はいはい、『そのうち』ね。とにかく邪魔しないでくれる?」
ブラムゼル 「もういい。下がれ」
レイリア 「あぁっ! そんな殺生な」
アレス 「よし。レイリアを守ったぞ!」 
レイリア 「アレス………」  
アレス 「礼はいらんぞ」
レイリア  「しないわよ……もう! この子は本当に……
   
  聖なる戦いは、始まりそうに無い……
しかしなんとか始めなければいけない。
で、動いたのはもちろん、野望満点のこの人。
   
セリス 「よーし、とりあえず闘技場だ。君たち庶民も少しは強くなれるだろ。
 ああ、そうそう。トリスタンとロドルバンはレベル10にならないようにな」
ラドネイ 「その前に武器を買いたいな」
セリス 「ああ、銀の大剣とかは売っておいたから。好きなように奪い合ってくれ」
トリスタン 「まあ、私は既に勇者の剣を買い取ったがな」
ロドルバン 「銀の大剣、俺がもらった!」
ラドネイ 「ちょっと! 私の分は!?」
ロドルバン 「守りの剣が残ってるだろ」
ラドネイ 「そんな軟弱な剣は必要ない!」
ヨハン 「そうだとも。剣などが守らずともラドネイはこの私が守る」
ラドネイ  「身の程を知れヨハン」
ヨハン 「はっはっは。手厳しいな、ラドネイは」
フェミナ 「皇子様、ボクに何かいい武器は無いの?」
セリス 「風の剣でも使えば?」
オイフェ 「レンスターのフィン殿が勇者の槍を持っているはずですな」
フェミナ 「じゃああとで売ってもらおうかな」
セリス 「そうそう、セオリーどおりペガサスにはレンスターの救援に行ってもらうよ」
アミッド 「あ、フェミナ。俺の妹がいたら保護しといてくれよ。
 そっちの方にいるような気がするから」
トリスタン 「ほう、妹か」
オイフェ 「そういえばトリスタンの妹はレンスターにいるそうだな?」
トリスタン 「ええ。子供のころにレンスター王家に送り込んでおきましたよ
オイフェ 「お、送り込んで?」
トリスタン
「フッ……予定通りならレンスターの王子の信頼を勝ち取っているはず。
 そう、この私の妹が……フッフッフ……。これで私もブルジョワに!
オイフェ 「……」
トリスタン 「まずレンスターを我が手に。そしていずれは……」
セリス 「いずれは?」
トリスタン 「フッ、言わずとも分かろう……」
セリス
「あのね、庶民の癖にそんな野望が実現できるとでも思ってるの?
 僕の世界征服の邪魔になることならそのうち消すよ?」
トリスタン 「フッ……。安心しろ。今はお前の味方だ……」
オイフェ 「……ここにも腹黒い奴がいたか……。セリス様だけで手一杯だというのに」
トリスタン 「まあ、とりあえず稽古をつけてもらいましょう」
オイフェ 「………」  
マナ 「あ、あの、オイフェさん。あんまり気にしないほうがいいですよ」
オイフェ 「ありがとうマナ。この軍の良心はお前だけだよ(涙)」
セリス 「さあ、みんな買い物もレベルアップもすんだな? じゃあ進軍開始」
   
  こうしてようやく戦いは始まった。
   
セリス 「敵の配置はどうだ?」
マナ 「ダークマージがたくさんいます」
ディムナ 「結構強いんだよね、闇の魔法って」
アミッド 「魔法のことなら俺に任せろ!」
マナ 「でも、闇の魔法に対して普通の魔法は効果が薄いですよ?」
アミッド 「……。いや、実力差があれば大丈夫だ! 不利な条件でも勝つ!」
セリス  「庶民の君にそんな真似ができるとは思えないね。」
アミッド 「いや、だから俺はね」
セリス 「庶民だろ。聖戦士とか名乗るならトールハンマーぐらい使ってからにしな」
アミッド 「………」
ディムナ 「そういえばレンスターを攻めてるブルーム卿って言うのはフリージ家の当主で
 つまりアミッドの親戚に当たるんだよね」
アミッド 「ああ、そうなるな」
セリス 「なるほど、君は敵の親戚か。じゃあ今後見張りをつけるから」
アミッド 「そんなこと言ったらセリスは敵の皇子と兄弟で皇帝と親戚じゃないか」
フェミナ 「しかもロプトの血まで引いてるんだよね」
セリス 「うるさいな。ペガサス、君はレンスターにさっさと救援にいけよ」
フェミナ 「はーい」
セリス 「もしもし、レンスター?」
フィン 「ハイこちらレンスター城です」
セリス 「ああ、今応援送ったから」
フィン 「ありがとうございます。これで何とか持ちこたえ……」
セリス 「どうかな。難しいんじゃない? 送ったペガサスは庶民だし」
フィン 「そういえばこっちにいるのもナンナでなくてジャンヌですね」
セリス 「まあ、頑張ってよ」
フィン 「了解です。リーフ王子、まずは村を開放し、スピードリングを入手しましょう」
リーフ 「うん。じゃあジャンヌと二人で解放してきて」
ジャンヌ 「リーフ様は?」
リーフ 「面倒だから……」
ジャンヌ 「そのごてごてと身につけた星50の銀の剣と光の剣とエリートリングと
 スキルリングその他諸々は何のために……」
フィン 「そうですよ。死すべき定めのキュアン様たちがあなたに託した遺産なのですよ、それは」
リーフ 「んー。歩くの面倒い。二人は馬に乗ってるじゃん。さっさと行ってきてよ」
フィン 「はあ……キュアン様、エスリン様……」
ジャンヌ 「いい、リーフ様。リーフ様はエリートリングを持ってるでしょ?」
リーフ 「うん」
ジャンヌ 「だからすぐにクラスチェンジできますよ。
 しかもクラスチェンジしたら馬がもらえるんですよ」
リーフ 「ふーん……じゃあ戦うよ」
ジャンヌ 「その意気ですよ!」
フィン 「ああ、ジャンヌありがとう……」
ジャンヌ 「(フィンって嘆くばっかりで説得の役には立たないもんね……)」
セリス 「レンスターは動き始めたか。じゃ、こっちもダークマージに対応しないとな」
ラドネイ 「よし……私が」
ロドルバン 「待てよ。守りの剣は魔法防御はフォローしないぞ?」
トリスタン 「やはり私が勇者の剣で反撃の間を与えずに倒すべきだろう」
セリス 「駄目だ。お前がレベル10以上になるとイベントが見れない」
ロドルバン 「あ、ひょっとして俺も?」
セリス 「当然」
アミッド 「だから俺が……」
セリス 「お前に何ができる」
アミッド 「………」
ユリア 「クスクス……光の魔法……」
マナ 「あ、そうだわ。ユリアなら光の魔法で闇の魔法に対抗できますよ」
ユリア 「アミッドは使えない光の魔法……クスクス」
アミッド
「い、嫌味かよ畜生……。
 でもな!ユリアだって能力が低いから大して役には立たないぞ」
ヨハン 「ここは私の出番だな」
ラドネイ 「よ、ヨハン!? だから身のほどを知れと……」
ヨハン
「ラドネイ。心配してくれるのは嬉しいが私なら大丈夫だ。
 この勇者の斧と再移動、そしてお前の愛があれば」
ディムナ 「最後の一つ以外はそろってるね」
トリスタン 「確かにこの場面、ヨハンで敵を削る選択肢は悪くない」
セリス 「………」
ヨハン 「では行くぞ! とうっ!!」
ラドネイ 「弱ったところをしとめるか。てやッ!」
ヨハン 「これが愛のワン・ツーコンビネーション! ああ! 感激だ!!」
セリス 「………」
マナ 「セリス様、どうかしましたか?」
セリス 「ヨハンが……」
マナ 「?」
セリス 「ヨハンが役に立ってる……悪夢だ……悪夢のような光景だ……」
マナ 「セリス様?」
セリス 「城で待機する以外の役目が無かったはずのヨハンが……
 庶民とはここまで役に立たない連中だったのか……」
ディムナ 「ぼ、僕だって役に立つよ。ほら! 二回攻撃!」
マナ 「兄さん、頑張って」
トリスタン 「確かにこのメンバーでは追撃を持つお前はなかなかの戦力だな(私ほどじゃないが)」
ラドネイ 「攻撃力も結構高いようだな(顔は弱気系で好みじゃないけど)」
ロドルバン 「例のお守りのおかげだな(それでも俺より地味だけどな)」
ディムナ 「あ、あんまり誉められると照れるな……」
マナ 「兄さん気付いて……誰も誉めてない」
セリス 「……まあいいさ。君たちは南西に向かってくれ。僕はシャナンを迎えに西に行くから」
   
  で、その頃のシャナン
   
シャナン 「さあ、バルムンクの剣をよこせ」
デイジー 「ハイ、どうぞ」
シャナン 「? やけに素直になったな」
デイジー 「だってシャナン王子でしょ。そしたらお礼もたっぷりでしょ」
シャナン 「……まあ、望みの報酬をやろう」
デイジー 「じゃ、イザーク半分!」
シャナン 「ああ、いいだろう……っていうと思うか! 何だそれは!」
デイジー 「だって今、敵に囲まれてるじゃない。バルムンクが無かったらシャナン王子死んじゃうよ。
 ってことはあたしはシャナン王子の命の恩人!それぐらいもらっていいに決まってんの」
シャナン 「私が戦わなければお前も死ぬんだぞ?」
デイジー 「だから、早くバルムンクで敵を倒してあたしを守ってよ。で、お礼ももらう」
シャナン 「何で助けた相手に礼をやる必要があるか……」
セリス 「相変わらず苦労してるね」
シャナン 「ああ、セリスか」
セリス 「敵は?」
シャナン 「さっき会話しながら全部倒したぞ」
セリス 「うんうん。やっぱり神器持ちは違うね。神の血だよ、やっぱり」
デイジー 「ん? アンタ誰?」
セリス 「君こそ誰だい。薄汚い盗賊?」
デイジー 「軍にだって盗賊ぐらい珍しくないでしょ」
セリス
「わかってないな。盗賊は盗賊でも僕の軍に所属するのは神の血を引いた盗賊だよ
 君のような小娘とは血の色まで違うのさ」
デイジー 「ちょっとシャナン様、何こいつ」
シャナン 「セリスだ」
デイジー 「セリスって、あの解放軍の?」
シャナン 「ああ、認めたくは無いがこれがセリス皇子だ」
レヴィン 「認めたくないよな……」
セリス 「で、君はパティの代わり? 図々しくウチの軍に所属する気なの?」
デイジー 「本当はイヤだけど所属してあげる。シャナン様からイザーク半分もらうんだからね」
セリス 「イザーク半分? そんなのもらったってどうせ僕が世界征服したらみんな僕のものだよ」
レヴィン 「ロプトの血だな……」
シャナン 「ディアドラの血か……」
セリス 「で、ウチの軍に所属したいなら貢ぎ物よこしなよね」
デイジー 「は?」
セリス 「み・つ・ぎ・も・の。なんかあるだろ、一つぐらい」
デイジー 「なんであんたに」
セリス 「あ、勇者の剣見つけた。とりあえずこれでいいや。もらっとくよ」
デイジー 「ちょっと! それはあたしが子供のころに拾った剣だよ!」
セリス 「なんだ、だったらもともと君のものじゃないじゃん」
レヴィン 「ほう、その剣は……」
セリス 「ん? 知ってるの、レヴィン?」
レヴィン 「あの時のじゃないか、シャナン」
シャナン 「ああ、本当だ。レックスの剣だな」
セリス 「?」
レヴィン 「レックスがアイラに貢ごうとして、ホリンに先を越されたので捨てた剣だ」
セリス 「なんだ、だったら元々親父の軍のもの。ってことは僕のものじゃないか」
デイジー 「何それ。どーゆー理屈よ」
シャナン 「まあ……どの道お前には使えない剣だ。有効活用したほうがいいだろう」
セリス 「そうそう。いいこというね、シャナンは。さすが神の血を引いてるだけのことはある」
デイジー 「……。まあ、シャナン様がそう言うならいいわよ。
 その代わりイザークの三分の二はもらうからね」
シャナン 「増えてる……」
セリス 「さ、塔を制圧して南に向かうか」
   

 

 

2、獅子の血を継ぐ猪

シャナンと合流したセリス。
向かうはダーナの街。そしてメルゲン城。
そしてその東にはセリス達の救援を待つレンスター勢

フィン 「ほら、リーフ様。そこのアーマーに攻撃です」
リーフ 「めんどいからフィンやっといてよ」
ジャンヌ 「リーフ様、止めを刺すと経験値がたくさん入りますよ。そしたら馬ももらえますよ」
リーフ 「んー。しかたないなあ」
   
  ものぐさなリーフを働かせるために、フィンとジャンヌは無駄な苦労ばかりしていた。
     
リーフ 「あ、倒した」
フィン 「素晴らしい! さすがリーフ様です」
ジャンヌ 「お上手ですよ、リーフ様」
リーフ 「ふーん」
フェミナ 「あのー、応援にきたんだけど……」
フィン 「ああ、あなたがセリス軍のペガサスですね。では一緒に城を守ってください」
フェミナ 「はーい」
ジャンヌ 「ほらリーフ様、レンスターの王子として挨拶を」
リーフ 「めんどい。いいじゃんべつに」
フィン 「いけませんリーフ様、あなたはキュアン様とエスリン様の……」
ジャンヌ 「リーフ様、リライブしてあげるから挨拶しましょうね」
リーフ 「よろしく」
ジャンヌ 「ちゃんと挨拶できましたね。偉い偉い」
フィン 「キュアン様、エスリン様……」
フェミナ 「………(どうしよう。なんか変なところに来ちゃったよ……)」
   
  で、レンスターを攻めるアルスター城のブルーム卿は……
   
ブルーム 「えぇい! 奴等ごときに何を手間取っておるか!」
フリージ兵
「し、しかし勇者の槍を持つフィンや
 やたらとドーピングかましたリーフが相手ではとてもかないません!」
ブルーム 「クソッ、イシュトーはどうした」
フリージ兵 「イシュトー様はメルゲン城を守備中です」
ブルーム 「イシュタルはどこだ!」
フリージ兵 「出張中です」
ブルーム 「リンダは!?」
リンダ 「はぁ〜い」
ブルーム 「リンダよ。お前の部隊で奴等を蹴散らせ!」
リンダ 「なんでですの?」
ブルーム 「なんでも何も敵だろうが!」
リンダ 「でも喧嘩するのはいけないことですよぉ」
ブルーム 「いいからさっさと行け!」
リンダ 「でもぉ、もうおやつの時間ですぅ」
ブルーム 「こ、この娘は……」
リンダ 「叔父さまもたべますかぁ?」
   
  こうしてまたしばらくの間、レンスターは生き長らえた。
そのころ、ダーナの街では……
   
アレス 「父の仇シグルドの息子、セリスがこの町の近くまできているらしいな」
レイリア 「仇って、戦争で死んだんでしょ。一々根に持たなくてもさ……」
アレス 「いいや、俺の母はミストルティンを俺に託して死んだ。つまり敵を討てということだ」
レイリア 「そうなの?」
アレス 「そうだ」
レイリア 「思い込みの強いあんたのことだし、なんかまた勘違いしてるんじゃない?」
アレス 「そんなことは無い!」
レイリア 「(傭兵部隊のジャバロー隊長にも苦労かけてるんだろうなあ……)」
   
  そんなアレスたちの日常はおいといて
  セリス軍。南を目指していたオイフェたちとも合流し、メルゲン城へ
   
ラドネイ 「シャナン様、お久しぶりです」
シャナン 「ラドネイか。久しぶりだな」
デイジー 「シャナン様、知り合い?」
ラドネイ 「え? 誰だ?」
デイジー 「あたしはシャナン様の命の恩人で、イザークの三分の二をもらうデイジーよ」
シャナン 「やらんというのに」
デイジー 「で、アンタ誰よ」
ラドネイ 「私はシャナン様の弟子、ラドネイだ」
デイジー 「ふーん。あんまりシャナン様に馴れ馴れしくしないでよね」
ラドネイ 「何ッ!? それはこちらの台詞だ!」
マナ 「ら、ラドネイ、あんまり興奮しないで……」
デイジー
「だってただの弟子でしょ。剣だけ習ってれば?
 スキンシップの必要なんか無いでしょ」
シャナン 「そういえば剣の腕はあがったか?」
ラドネイ 「ハイ、このとおり」
シャナン 「まだ重心移動が甘いな……。腕だけで振るな。全身で剣を使え」
ラドネイ 「は、ハイ」
デイジー 「ちょっとちょっとちょっとぉ! 馴れ馴れしいんじゃないのぉ?」
マナ 「まあまあ……。剣の訓練ですし……」
デイジー 「何よ。あんたラドネイの肩持つ気?」
マナ 「え? 別にそういうのじゃなくて……」
ディムナ 「まあまあ。女の子同士、仲良くすればいいじゃないか」
デイジー 「何よアンタ」
マナ 「私の兄のディムナです」
ディムナ 「あ、よろしく……」
デイジー
「あのねえ、偉そうにしないでくれる?
 何が『女の子同士』よ。女は皆一緒なわけ?」
ディムナ 「べ、別にそんなつもりじゃ……」
デイジー 「とにかく! 人のことにとやかく口挟まないでよ」
ディムナ 「あう……」
マナ 「兄さん……やっぱり立場弱いのね……」
アミッド 「で、とにかく先に進まない?」
ロドルバン 「そうそう。西に中立軍。南に敵軍。ちょっとやりにくいけどさ」
セリス 「ああ、まずは南のメルゲンを落とすよ。但し後ろにも注意しながら」
トリスタン 「メルゲン城の城主はフリージ家のイシュトー王子らしいな」
アミッド 「え? ひょっとして俺の親戚? 親戚バトル?」
セリス 「見張りつけとくから」
ロドルバン
「同じフリージの血でも、あっちは遠距離攻撃できるしトローンも使えるし
 アミッドとは偉い違いだよな」
アミッド 「そ、素質なら俺も劣らないはず。そう、素質なら俺はセリス軍ナンバー1魔術師」
ユリア 「リザイア……」
ロドルバン 「ああ、素質でも光魔法を使えるユリアが上だな」
アミッド 「………」
オイフェ 「さて、メルゲン軍の主力はアーマーと魔術師ですな」
シャナン 「そして城主が遠距離攻撃で援護か。上手い布陣だ」
セリス 「こうなると庶民じゃ辛いか……」
シャナン 「壁役は断るぞ」
セリス 「いいよ。ユリア、リザイアで何とかして」
ユリア 「命中率、低い……」
トリスタン 「外せば死ぬからな」
マナ 「やっぱりおびき出して少しずつ倒しましょう、セリス様」
セリス 「仕方ないか」
   
  で、アーマーと魔術師の大部分を撃破
   
セリス 「残るはロングアーチとボスと副隊長のライザだけか」
トリスタン 「ライザは私が倒しておこう」
セリス 「レベルは大丈夫か?」
トリスタン 「まだ10にはならん。案ずるな」
セリス 「じゃ、ボスは……」
アミッド 「俺が」
セリス 「邪魔だ退け庶民」
アミッド
「いいだろ! 親戚対決ぐらいやったって。
 妹の手がかりだってつかめるかもしれないだろ!」
セリス 「シャナン、突っ込んで」
シャナン 「いいのか? 彼は」
セリス 「庶民の言うことに一々耳を傾けてたら世界制服は出来ないよ」
トリスタン 「では、まず私が……勇者の剣!」
ライザ 「ウッ!……い、イシュトー……」
シャナン 「それじゃあ私が突撃するか」
イシュトー 「おのれ、よくもライザを……」
シャナン 「悪いな、流星剣!!」
イシュトー 「グフッ……」
セリス 「じゃ、制圧だね。よーし、ロドルバン、トリスタン。専用イベントの時間だ」
ロドルバン 「なあ、トリスタン」
トリスタン 「なんだ?」
ロドルバン 「ひょっとして俺たちって目立ってないんじゃないか?」
トリスタン 「お前は目立ってないな」
ロドルバン 俺だけかよ
トリスタン 「わたしはたった今、敵の副将を倒したばかりだぞ?」
ロドルバン 「お、俺だってさっき、銀の大剣で必殺を出して敵を倒したぞ」
トリスタン 「フッ、雑兵一人と副将では格が違うな」
ロドルバン 「……と、とにかく特訓に付き合え」
トリスタン 「仕方の無い奴だ……。どうしてもと言うならやってやろう」
ロドルバン 「てりゃっ!」
トリスタン 「たりゃっ!」
ディムナ 「特訓かあ。いいなあ、能力アップできて」
ロドルバン
「何言ってやがる。
 お前は恋人からお守りをもらった上に力が5も上がったじゃないか」
アミッド 「俺にもそういうイベント、欲しいな……」
マナ 「あのう」
ロドルバン 「どうした?」
マナ 「ダーナの街の領主が中立の状態を破って、後から奇襲をかけてきたって」
ディムナ 「休む暇ないなあ」
デイジー 「休んでれば? どーせ役立たずなんだから」
ディムナ 「な、何言ってんだよ。僕はちゃんとした戦力だよ」
デイジー 「能力がどうであれ、顔が弱そうなのよ、アンタは」
ディムナ 「か、顔って……」
ロドルバン 「おい、デイジー! 本当のこといったら可哀想だろ!」
ラドネイ 「本人も気にしているんだぞ」
トリスタン 「情けぐらいはかけてやれ」
ディムナ 「ありがとう友情……」
マナ 「兄さん……違うって」
レヴィン
「戯れはそのくらいにしておけ。
 ダーナにはあのエルトシャンの血を引く騎士がいると聞く」
トリスタン 「ほう、アレス王子か」
レヴィン 「そういえばトリスタンはアグストリアの騎士の出身だったな」
トリスタン 「フッ……そうか。セリスについてくればいずれ会えるとは思っていたが
 こんなに早く会えるとはな……クックック」
ロドルバン 「また何か腹黒いこと企んでるな……」
   
  そしてダーナ軍は……
   
アレス 「ついに出陣か」
レイリア 「いい? ジャバロー隊長の言うこと聞いて戦うのよ。
 突っ込むばっかりじゃただの猪武者なんだから」
アレス 「もちろんだ。セリスを倒せという命令をしてもらって、そしてセリスを倒す!」
レイリア 「……まあ、いいわ。頑張りなさいよ」
アレス 「ああ、もちろんだ」
ジャバロー 「話は済んだか?」
アレス 「ああ」
ジャバロー 「よし、傭兵部隊出撃する!」
アレス 「ジャバロー、俺にセリスを殺らせてくれ」
ジャバロー 「親の敵か? 戦争にそんなものを持ち出すと死ぬのは自分だぞ」
アレス 「死ぬのは奴さ。この魔剣ミストルティンによってな」
ジャバロー 「自信過剰はやめておけ。それでお前はあの娘にも迷惑をかけてるんだぞ」
アレス 「レイリアのことか?」
ジャバロー 「ああ。お前が町を出たおかげで、あの娘も普通に就職できるだろう」
アレス 「何ィッ!? じゃあレイリアはブラムゼルのところに!?」
ジャバロー 「ああ、前からあそこに就職希望だったしな」
アレス 「おのれ何ということを! 見損なったぞジャバロー!」
ジャバロー 「おい、アレス?」
アレス 「育ての親のあんただが、それも今日限りだ! 
 俺はブラムゼルからレイリアを取り戻す!」
ジャバロー 「だから人の話を聞けと……」
アレス 「黙れ! ダーナに突撃だ!」
セリス 「はい、そこでストップ」
アレス 「何?」
セリス 「アレスはこっちに全力疾走。そのまま突っ込んだら死ぬだけだろ」
アレス 「なぜお前が俺に命令する。お前は俺にとって仇敵」
セリス 「ああ、会話はあとで。とにかく早く来いってば」
アレス 「く、くそ……」
トリスタン 「あれがアレス王子か……意外と扱いやすそうだな……」
   
  そのころ、アルスターでは
   
ブルーム 「リンダ! お前がおやつを食べてる間にイシュトーがやられたぞ!
リンダ 「えぇ〜〜〜」
ブルーム 「さっさと出撃してセリスを倒して来い!」
リンダ 「はぁ〜い。でも、いちごショートケーキだけ、食べてからにしますぅ」
ブルーム 「まだ食べてたのか……」
ヴァンパ 「ブルーム様」
エリウ 「お待ちを!」
フェトラ 「ここは私たちに!」
ブルーム 「ヴァンパ三姉妹か。よし、お前達も出撃しろ」
リンダ 「ヴァンパさん、一緒に来るんですかぁ」
ヴァンパ 「リンダ、あんたには負けないよ!」
リンダ 「はぁい。競争ですぅ」
ヴァンパ
 
「……違う。そんなほのぼのとしてアットホームな競い合いじゃない!
 女同士の意地をかけた熱い、それでいて冷徹なバトルなんだ、これは!」
リンダ 「わかりましたぁ。一緒に頑張りましょうねぇ」
ヴァンパ 「違うと言うに!」
   
  で、レンスター
   
フェミナ 「あれ、アルスターから新しい部隊が出てきたよ」
フィン 「さすがに我々だけでは相手に出来そうにないな」
ジャンヌ 「一度城を捨てて、国境を越えてセリス軍と合流しましょう」
フィン 「ああ、それがいい。リーフ様、よろしいですね?」
リーフ 「歩くの嫌い」
フィン 「だ、大丈夫です。セリス軍と合流すれば楽が出来ますよ」
ジャンヌ 「そうそう。闘技場で安全に経験をつむこともできるんですよ」
リーフ 「ふーん。じゃあ行く」
フェミナ 「あ、あのさあジャンヌさん?」
ジャンヌ 「え?」
フェミナ 「その……部外者のボクが口出すのもなんだけどさ、ちょっと甘すぎなんじゃ…」
ジャンヌ 「う……(涙)」
フェミナ 「え?」
ジャンヌ 「分かってるんです。でもこうでもしないと動いてくれなくて……(涙)」
フィン 「私が甘やかしすぎたんですねえ……(涙)」
フェミナ 「あ……あはは……まあ、あんまり深刻に受け止めないで……」
リーフ 「何してんの?」
ジャンヌ 「い、いえ、何でも」
フェミナ
「はあ……王子なんて、セリス様ぐらいでちょうどいいのかな……
 あるいはトリスタンみたいな自信過剰とか」
ジャンヌ 「え? 兄を知ってるの?」
フェミナ 「へ? ジャンヌってトリスタンの妹だったの?」
ジャンヌ 「ええ……。そう…兄さんがセリス軍に……ああ、頭痛が」
フェミナ 「苦労してるね……」
   
  で、セリス達は
   
セリス

「さあ、ダーナを落とすよ。
 トリスタンとロドルバンもレベル規制が終わったから、バンバン戦っていい。
 まあ、戦えれば、だけど」
アレス 「えぇい、なぜ俺がセリス軍に!」
レヴィン 「気にするな」
セリス 「さて……ジャバローとブラムゼルを倒して、制圧」
ジャバロー
  &
ブラムゼル
「何ィッ!?」
セリス 「普通の戦いなんてわざわざ描いても仕方ないだろ」
ジャバロー 「せめて師弟対決……」
セリス 「いいよ、別に」
アレス 「レイリア! レイリアはどこだ!」
レイリア 「アレス……」
アレス 「レイリア! 大丈夫か!」
レイリア 「大丈夫なわけ無いでしょ! せっかく就職したのに雇い主殺しちゃって!!」
アレス 「レイリア、俺はこれからずっとお前を守りつづける!」
レイリア 「ずっと……付きまとうつもり……」
オイフェ 「おお、セリス様。あちらからフィン殿たちが」
セリス 「なんだ、レンスター勢逃げてきたのか」
シャナン 「しかしこれで同志がすべて合流ということになるな」
アレス 「俺は同志じゃない。父の仇を」
セリス 「はいはい、その話は後で聞いてあげるよ」
   

 

 

 

3、聖なる集結

ついに合流した聖戦士たち
しかし休む間もなくアルスターの追撃が彼等を襲う
そしてもう一つの野望も……
君は、生き延びることができるか!?

フィン 「お久しぶりですね、オイフェ、シャナン王子。そしてレヴィン様」
レヴィン 「大分苦労したようだな」
フィン 「いえいえ、あなたほどでは」
オイフェ
「私もフィン殿も子育てで苦労しましたが
 レヴィン様は一回死んでおられますからね
。並みの苦労ではない」
シャナン 「しかし久しぶりだな。シレジア以来か」
セリス 「もしもし? おっさん同士で盛り上がらないでくれる?」
シャナン 「待て……『おっさん』の中に私も入ってるのか」
セリス
「フィンさあ、リーフ連れてきたんでしょ? 
 結構いい戦力になるって期待してるんだけど」
リーフ 「呼んだ?」
セリス 「……。なんだ、リーフレベル低いままじゃん」
フィン 「申し訳ない……」
セリス

「さっさと闘技場行ってよ。
 ああ、それからデイジーから貢いでもらった勇者の剣、売っておいたから
 欲しい人は買い取っておいて」
ラドネイ 「私がもらおう」
デイジー 「感謝しなさいよ、あたしに」
ラドネイ 「そんな義理は無い!」
デイジー 「何ぃ〜〜〜」
マナ 「もう……本当に仲悪いんだから……」
リーフ 「ねえねえ、そこの人」
セリス 「え? 僕に何か用?」
リーフ 「君って誰なの?」
セリス 「………主人公のセリスだよ」
リーフ 「ふーん」
セリス 「主人公の名前も忘れるとは……馬鹿王子もここにきわまったな」
フィン 「いえ、リーフ様もトラ7では立派な主人公!」
ジャンヌ 「張り合わないでいいから……」
トリスタン 「フッ・・・・・・何だ、そこにいたのかジャンヌ」
ジャンヌ 「(ギクッ)あ……。に、兄さん久しぶり」
トリスタン 「どうやら上手くリーフ王子に取り入ったようだな」
ジャンヌ 「別にそういうのじゃないって」
トリスタン 「フッ。私の野望に利用させてもらうぞ……」
ジャンヌ 「ああ……頭痛い」
フェミナ 「頭痛薬いる?」
ジャンヌ 「ありがと……」
アレス 「おい、セリス! お前を殺させろ!」
マナ 「そんな物騒な……」
レイリア
「そうよ、だいたいこれからこの軍にお世話になるんでしょ。
 もうちょっと礼儀正しくしなさい」
セリス 「あー、君、アレス君。君は既に僕の軍の兵士ってことになってるから」
アレス 「だから俺はお前の父シグルドに殺されたエルトシャンの息子なんだよ!」
セリス


「だから何?
 ユリアなんか僕の父親を陥れて処刑したアルヴィスの娘だよ。
 アミッドはフリージ家だし、
 シャナンなんか僕の母親が行方不明になった原因だよ
シャナン 「触れるなそれには」
レヴィン 「私が保証しよう、エルトシャンとシグルド、キュアンは
 戦場でも世間話をするくらい仲がよかったぞ」
オイフェ 「第3章参照ですね」
アレス 「嘘をつくな。戦場で喋れるわけが無いだろう!」
フィン 「キュアン様ときたら戦場でも修行を始める人でしたからね。
 世間話なんて無茶のうちにも入りません。」
レヴィン 「どうだ、信じる気にはなれんのか」
アレス 「………」
レヴィン 「まあ……お前が真実を見抜けないほどの愚か者ならば仕方ないがな」
アレス 「いいだろう。但しそれが嘘だとわかったら俺はすぐにセリスを斬るぞ」
セリス 「いいよ。とにかく仲間になれ」
アレス 「………」
レイリア 「ほらアレス、よろしくは?」
アレス 「………フン……」
レイリア 「もう……ごめんなさいね、セリス皇子」
ジャンヌ 「レイリアさんも苦労してるのね……」
デイジー 「アレス……王子かあ。地位はいいけど直情過ぎる奴は扱いにくいからパスかなあ」
ラドネイ 「顔はともかく中身には問題がありそうだな……やはりシャナン王子のほうが……」
ロドルバン 「おまえらいいコンビだよ」
レイリア 「この軍も色々問題抱えてるのね」
セリス 「君は……踊り娘かい?」
レイリア 「ええ。……皇子様は踊り子を見るのははじめてかしら?」
セリス 「別に。ただ神の血を引いてるわけでもないただの踊り子が
 僕の軍に所属するのが気に入らないだけさ」
レイリア 「………」
アレス 「やっぱり殺すか?」
レイリア 「やめときなさい」
マナ 「ごめんなさいレイリアさん、本当は悪い人じゃないんです」
トリスタン 「本気で言っているのか、マナ?」
マナ 「う……」
アレス 「お前は?」
トリスタン 「フッ……あなたが黒騎士アレス……いや、アレス王子」
アレス 「?」
トリスタン 「ずっとあなたを探しておりました。こんなところで会えるとは……」
アレス 「俺を? お前は一体……」
トリスタン
「私の名はトリスタン。獅子王エルトシャンの側近だった聖騎士イーヴの息子。
 あなたの部下でございます」
アレス
「イーヴ……あの聖騎士イーヴか。母上から話は聞いている。
 彼はエルトシャンに最も忠実だったと……」
トリスタン
「父のあとを継ぎ、私もノディオンに忠誠を誓います。
 ノディオンの王……すなわち、あなたに」
アレス 「トリスタン……頼もしく思う。」
トリスタン 「ありがたき幸せ」
マナ 「ああ……初めて真面目な会話を見た気がする」
アレス 「騎士イーヴの話はよく聞かされた。父エルトシャンも感謝しているだろう」
トリスタン 「そうですか……。しかし……父の最期についてはご存知ですか?」
アレス 「叔母上を守って戦死したと聞くが?」
トリスタン 「確かにそうです。しかしそのとき援軍に駆けつけたシグルド軍は、
 やろうと思えば父を助けることが出来たはず」
マナ 「え?」
アレス 「騎士イーヴは見捨てられたというのか?」
トリスタン

「そうです。シグルドは他国の騎士である父の命など、助けようともしませんでした。
 それどころか生き残った二人の叔父、エヴァとアルヴァも
 その後、シグルドの指揮により、捨石のように使われて死んだと……」
アレス 「シグルド……やはりそんな男だったのか!」
トリスタン 「セリスもその血を確実に引いています。
 私は幼少の頃からセリスとともに育ちましたが……
 奴は神の血を引く己の力に溺れ、人をさげすむ外道です
アレス 「……嘘ではないようだな」
マナ 「どうしよう……否定できない……」
アレス 「おのれセリス……やはり斬る!」
マナ 「そ、そんな!」
トリスタン

「それはやめておいた方がいいでしょう。
 当面の敵はグランベル帝国。そしてロプト教団です。
 それにあなたにはアグストリア再興の義務もある」
アレス  「……俺にどうしろと?」
トリスタン 「この戦いを勝ち抜き、そしてアグストリアを再建していただきます。
 そしてその上でセリスと戦うのです」
アレス 「成る程な……」
マナ 「そ、そんなちょっと……」
アレス 「よくわかった。トリスタン、来るべきセリスとの戦いに向けて、俺はお前を盟友と思う」
トリスタン 「もったいないお言葉……」
ロドルバン 「おーい、セリスが呼んでるぜ」
アレス 「そうか」
マナ 「あう……」
ロドルバン 「どうかしたのか?」
アレス 「いや、なんでもない」
マナ 「………」
アレス 「さて……まずはフリージ軍を倒すか。『まずは』な」
ロドルバン 「ああ、行こうぜ」
マナ 「あう……」
トリスタン 「アレス王子……予想以上に単純な男だったな……。
 せいぜい利用させてもらおう……」
   
  なお、トリスタンの言葉が嘘でないことは第2章で確認できる。
さて、無意味な野望が暴走する中、
アルスターからの追っ手はついに国境まで辿り着いた。
   
リンダ 「皆で遠足すると楽しいですぅ」
ヴァンパ 「違う! これは戦いなんだ! って何度言わせるんだこの馬鹿娘!!」
セリス 「はるばるようこそ……」
ヴァンパ 「お前がセリスか!」
エリウ 「私たち三姉妹の力!」
フェトラ 「見せてやる!」
セリス 「じゃあ、シャナン、そこに立ってて」
シャナン 「囮役はいやだというのに」
セリス 「立ってるだけでいいから。後の処理は庶民たちに任せるし」
シャナン 「なまじ神器を持っていると、これか……」
レヴィン 身に覚えがありすぎて怖いな
三姉妹 「たった一人で何ができるか。舐めるな!」
シャナン 「回避して、流星剣」
ヴァンパ 「グフッ!?」
エリウ 「馬鹿な!」
フェトラ 「クソッ、撤退だ!」
リンダ 「あぁ〜〜。皆もう帰っちゃったんですかぁ」
ロドルバン 「何で三姉妹はわざわざ反撃受けるような攻撃の仕方をしたんだ?」
ディムナ 「そういえば遠距離から攻撃すれば死ななかったはずだよね」
アミッド 「トライアングルアタックのためだろ」
セリス 「よーし、邪魔な奴等がいなくなったところで雑魚を倒せ」
ディムナ 「了解! そりゃっ!」
ラドネイ 「勇者の剣のお披露目だ!」
ロドルバン 「銀の大剣! ちょっと命中率に不安があるんだよな、これ」
フェミナ 「ああっ、フィンさんに勇者の槍を売ってもらうの忘れてた!」
フィン 「次の章で渡しますよ。はあ……これ、私の宝物なんですけどね」
セリス 「大体雑魚は倒したかな」
ディムナ 「うん。残ったのは……」
リンダ 「あれぇ? 私だけですぅ」
アミッド 「ん? キミのそのペンダントは……」
リンダ 「皆いなくなっちゃったですぅ。逃げなきゃ〜」
アミッド 「待って! キミは俺の妹…」
リンダ 「逃げなきゃ〜」
アミッド 「ま、待て〜」
リンダ 「いや〜」
アミッド 「待って〜」
リンダ 「いや〜」
アミッド 「待て〜」
リンダ 「いや〜」
ロドルバン 何やってんだアミッド
ディムナ 「移動力同じだから一生かかっても追いつけないね」
フェミナ 「あれがアミッドの妹なの? 髪の色も違うじゃん」
アミッド 「間違いない! あのペンダントは両親が俺たちにくれたものだ!」
フェミナ 「たまたま同じの持ってただけかもしれないよ?」
アミッド 「そんなはずは無い! とにかく誰か捕まえてくれ〜」
ディムナ 「よーし、僕が馬で道をふさぐからその間に追いついてきてよ」
アミッド 「たのむ! 他の馬部隊も行ってくれ!」
ディムナ 「行くぞッ、通せんぼだ!」
リンダ 「きゃぁ〜〜〜た〜す〜け〜て〜」
ディムナ 「いや、別にただ道ふさぐだけだからそんな大声……」
リンダ 「た〜〜〜す〜〜〜〜け〜〜〜〜〜て〜〜〜〜〜〜〜〜」
ディムナ 「ちょ、ちょっと待って。これじゃまるで僕が悪者……」
トリスタン 「どうしたのですお嬢さん」
リンダ 「たすけてください〜〜」
ディムナ 「と、トリスタン! 事情を説明してやってくれよ!」
トリスタン 「ディムナ……か弱い女性に乱暴を働こうとは、幼馴染として悲しいぞ」
ディムナ 「え? ち、違………」
トリスタン 「もう大丈夫ですよお嬢さん」
リンダ 「ありがとうございますぅ〜〜」
ディムナ 「と、トリスタンお前まさか……」
トリスタン 「………」
ディムナ 「まさかとは思うけど……」
トリスタン 「………」  
ディムナ 「女の子を口説くために僕を犠牲に……」
トリスタン 「フッ……悪いな」
ディムナ 「最悪だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
アミッド 「やっと追いついた! リンダ、俺はキミの兄さんのアミッドだよ」
リンダ 「え、お兄様?」
アミッド 「ほら、母さんからもらったペンダント、キミのと同じだ」
リンダ 「ほんとですぅ」
アミッド 「君はブルームに利用されているんだ。俺と一緒にセリス軍で戦おう」
リンダ 「わかりましたぁ」
アミッド 「よかった! このまま戦いになってたらと思うとぞっとするよ」
リンダ 「はい。私も危ないところでしたぁ」
アミッド 「え? 危ない?」
ディムナ 「ぎく……」
リンダ 「あの人に襲われそうになったところを助けてもらいましたの」
アミッド 「ディムナ……お前……」
ディムナ 「ち、違……違〜〜〜〜〜っ!!」
セリス 「なんだ、また新しい庶民が入ったのか」
リンダ 「リンダですぅ。よろしくですの」
セリス 「スキルと武器は?」
リンダ 「スキルはぁ、『怒り』と『エリート』でぇ、持ち物は『エルサンダー』ですぅ」
セリス 「アミッドよりは使えそうだな」
アミッド 「いや、レベルが違うよ。それにウインドのスペックは……」
フィン 「そんなことはどうでもいいです。早くレンスター城を奪い返しましょう」
ジャンヌ 「そうね。私たちの城だものね、リーフ様」
リーフ 「ふーん」
ジャンヌ 「リーフ様……(涙)」
セリス 「じゃ、レンスター城制圧!」
ジャンヌ 「え?」
フィン 「セリス様が、制圧ですか?」
セリス 「そりゃそうだよ。他に誰がやるっていうんだい」
フィン 「しかしその城はレンスターの城であって……」
セリス 「いいだろ、リーフ?」
リーフ 「別にいいけど」
セリス 「ほら、問題なしだ」
フィン 「…………」
セリス 「そうそう、リンダはメルゲンで闘技場に行って来て」
リンダ 「はぁ〜い」
アミッド 「イシュトーのいた城か……俺たちの従兄妹だったんだよな」
セリス 「これから君の叔父と戦うんだけど?」
アミッド 「……戦いに感傷は不要だな」
リンダ 「リンダ、闘技場、いっきま〜すぅ〜」
アミッド 「無理するなよ、リンダ」
敵兵 「とりゃ!」
リンダ 「痛〜い」
アミッド 「リンダ!」
リンダ 「ひどいですぅ……痛いですぅ……」
アミッド 「!? リンダの印の組み方が変わった!!」
リンダ 「酷いですぅー−−−ッ!!」
敵兵 「ふ、雰囲気が変わ……たわば!!」
アミッド 「こ、これがスキル『怒り』…」
レイリア 「怒らせたくない娘ね〜」
リンダ 「あれぇ〜? 敵さんが倒れてますぅ。どうしたんですかぁ?」
ロドルバン 「そして本人は覚えてない、か……お約束だな」
ラドネイ 「しかし単発の攻撃だけでは、戦力として計算しづらいな」
フェミナ 「ねえ、フリージの軍、ボス以外もう倒したってさ」
ロドルバン 「早いな。じゃああとはブルームを倒して制圧だけか?」
フェミナ 「その前にデイジーとシャナンさまでイベントがあるからやっておけってさ」
デイジー 「あたし? じゃ、行かなきゃ」
ラドネイ 「王子と? なら一人で行かせるわけにはいかんな」
デイジー 「なによアンタストーカー?」
ラドネイ 「黙れ!」
レイリア 「もう、喧嘩しないの」
マナ 「そうよ」
リンダ 「どこか行くんですかぁ? じゃあ私もいきますぅ」
シャナン 「……で、皆来たわけか」
ラドネイ 「迷惑ですか?」
シャナン 「いや、そういうわけでは……」
デイジー 「シャナン様、稽古つけてくださいね〜」
シャナン 「うむ。まず基本から……」
デイジー 「基本はイザークの三分の二で、今後の状況によっては四分の三ぐらいまでもらうね」
シャナン 「何の基本だ!」
ラドネイ 「デイジー、せっかく王子が稽古をつけてくれているんだ。真面目にやれ」
マナ 「そうね。シャナン王子も暇じゃないですし」
デイジー 「何よ、またあんたラドネイの肩持つの?」
マナ 「え? だからそういうのじゃなくて」
レイリア 「ほら、真面目にやりなさい、デイジー」
デイジー 「ブルータスお前もか」
レイリア 「え?」
デイジー 「黒髪が三人してあたしとシャナン様を遠ざける気?」
ラドネイ 「お前のような奴を王子に近づけさせるものか」
ヨハン 「ラドネイ、誰か忘れてはいないかな?」
ラドネイ 「いや別に」
デイジー 「クッソ〜。そっちがその気なら……リンダ!
リンダ 「はぁ〜い」
デイジー 「それから……そこのジャンヌ!
ジャンヌ 「え? 私?」
デイジー 「デイジー・リンダ・ジャンヌで茶髪トリオ結成!
ラドネイ 「む……やるな。私たち黒髪トリオに対抗するとは」
マナ 「そ、それって私たちのこと?」
レイリア 「いつのまにそんなことになってるのよ」
ジャンヌ 「えーっと、話が飲み込めないんだけど?」
デイジー 「これだけ仲間が増えたら個人個人じゃやっていけないでしょ
 だからチームを組むの。
 ちょうど髪が茶色で、しかもピンク色の衣装を着けてるところまで同じなんだから」
リンダ 「ピンクの服ですぅ」
ジャンヌ 「確かにピンクのバンダナ……」
ラドネイ 「まずいな……こっちは髪の色しか共通点がない」
レイリア 「だから何がまずいのよ……」
シャナン 「………おーい。とりあえず稽古はもういいのか?」
デイジー 「あ、そーいえば」
ラドネイ 「忘れてたな」
レイリア 「あんた達自分が何のために争ってるかぐらい覚えときなさいよ……」
リンダ 「喧嘩はいけませんの〜」
マナ 「そうですよ」
アミッド 「女の子たち、楽しそうだなあ」
ディムナ 「そうだね」
フェミナ 「そうね」
アミッド 「あれ? フェミナ……」
フェミナ 「どうせボクには声はかからなかったよ……
ディムナ 「そういえば一人だけ緑の髪だもんね」
アミッド 「いや、ユリアもあの中に入ってないぞ」
フェミナ 「元々喋らないもんね、あの子は」
ユリア 「クスクス……」
アミッド 「げ、元気出せよ。髪の色なら俺と同じじゃないか」
フェミナ 「……」
セリス 「おい、そっち何やってるんだ」
アミッド 「あ、セリス様」
セリス 「とりあえず今、ブルームを追い詰めたから、誰か止めを刺せ、早く」
ブルーム 「やらせはせん。このトールハンマーに賭けて、やらせはせんよ!」
ディムナ 「さすがに神器持ちが相手だと僕じゃ辛いな」
アレス 「俺がミストルティンで切り刻むか」
トリスタン 「いえ、私が勇者の剣で」
セリス 「どっちでもいいよ。好きにやってくれ」
トリスタン 「アレス王子。あなたの手を煩わせる必要はありません」
アレス 「よし、トリスタン、任せたぞ」
ブルーム 「貴様ごときに……」
トリスタン 「星90勇者の剣を見ても同じ台詞がいえるかな?」
ブルーム 「なに……」
トリスタン 「必殺・必殺!」
ブルーム 「クッ、退却だ……」
アレス 「よくやった、トリスタン」
ロドルバン 「上手く言いくるめて経験値稼いだな……」
セリス 「じゃ、制圧」
レヴィン 「よくやった。これでレンスターは解放された。
 だがブルームはまだ生きている。この戦いはまだまだ終わらんぞ」
セリス 「どの道結末は、僕の勝利以外、ありえないんだけどね」 
   
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