ギル・ギルダーのGMが前進しつつスプレイ・ガンを撃つ。初弾、外れ。ビーム光がジャブローの壁面を溶かした。 「チッ!」 臍を噛む。今の一撃だけは、絶対的優位だったはずだ。 ザクが振り返る。と、同時にマシンガンを撃つ。モノアイと目が合った。GMが前進を止める。回避運動! 急停止から方向転換。半自動操縦の回避プログラムは想定どおりに働いた。が、実戦経験においてはザクに一日の長がある。回避軌道に沿って、掃射!コックピットが振動した。 「被弾!?」 こめかみに寒気が走った。一撃で撃墜された戦闘機の姿が脳裏に蘇る。被害状況、チェック。モニターの片隅に情報が並ぶ。肩口に被弾。アーマー部分だ。被害軽微! ……被害軽微だって? ギルダーに一瞬、戸惑いが芽生えた。ただではすまないはずだ……。それが直前の記憶と重なる。 ああ、そうだ! ザク・マシンガンの直撃を受けた同僚のGMは、一度は立ち上がったのだ。 『GMの装甲は、上手くやっている!』 笑みさえ浮かんだ。これを軽率と笑うことは出来まい。戦場に身を置くものの感情として、硬い鎧に護られているという実感は何よりも得がたいものだ。 ザクがマシンガンを打ち続ける。連続的に回避運動を実行。いくつかの弾丸が装甲とぶつかり合う。が、直撃ではない。 『技術屋連中の腕自慢は、ハッタリだけではなかったな』 ふと、思う。GMに比べればジオンのザクなんて、ドラム缶も良いところですよ。とは親しくなったメカニックの口癖だった。 不意に弾幕が途切れた。ザクがトリガーを引く。反応なし。弾丸切れだ。