MS-06『ザク』は、決してモビルスーツとして熟成されたモデルではない。地球連邦軍のモビルスーツ開発計画の遅れを考慮しても、後発のGMの方が圧倒的に洗練されたタイプであるはずだ。 だが、パイロットは、違う。未だ実戦経験の無い新米パイロットたちにとって、ザクは十分な脅威であった。 GMが辛うじて立ち直る。サーベルを収め、スプレイ・ガンを取り出す。緩慢であった。オート操縦に設定された、一連の動作である。迂闊というべきだろう。目の前のザクには、それは格好の的である。 マシンガンを乱射!後退を試みるGMが、直撃を受ける。そのまま後ろに吹き飛ぶような形になった。 ギル・ギルダーはこの勇敢で、愚かなパイロットをフォローするべきだった。だが、スプレイ・ガンを構え、腕を震わせながらそれを眺めていたのみだった。 理由は二つある。一つは、脚をとられた。ジャブローは地下要塞であるがゆえに複雑な地形を持つ。くぼみに脚を取られ、姿勢を崩した。 もう一つは、あまりに二機が接近しすぎていた。ザクを狙ったビーム弾が味方を直撃するかもしれない……その臆病さが結果的に仲間を見殺しにした。悔恨がギルダーを震わす。 「……!」 接近を試みる!