序章 聖騎士誕生

 

1、五度目のプロローグ

 シグルド公子は自室で空を眺めていた。
 父バイロンの出征を見送ったのはつい最近とも、遠い昔とも思われて、
その不確かな時間感覚に彼は肩をすくめた。
細く伸びた雲が宙をまだら模様に染めていく。もう何度も同じ光景を見たような気がした。
 何度も何度も、同じ場所をぐるぐると回っているような、既視感。
 これが、何度目だろう?
その雲が冷酷な環を描くのか、螺旋を描き上昇、あるいは下降していくのか。
しかし、それはシグルドの考えることではなかった。
 運命と呼ばれるものだと、彼はそう信じていたし、事実、それはそうだった。
 風が雲を運んで行く。おぼろげな影が彼の青い髪を覆った。
この世界すら、運命という名の歯車のもとで、もう何度も、同じようにまわっている。
太陽が上り、沈むように。夜と朝が永久に繰り返すように。
 汗を含み握り締めた拳を彼はそっと風にさらした。
 確かな生の感触がある。この命が尽きるまで、生きる。
ただそれだけのことに自らの全てを傾ける。
 それを人は人生と呼ぶのだと、彼は知っていた。
 階段を駆け上る誰かの足音が聞こえた。
それがシグルドに訪れる運命の足音であるということも、彼はとうに知っているのだった。

ノイッシュ「シグルド様!」
シグルド 「やあ、ノイッシュ。」
ノイッシュ
「今度こそ私を使ってください!」
シグルド 
「無茶言うなよ。この前、ラケシス姫とくっついただろ。お前にはそれで十分」
ノイッシュ「でも結局出番はなかったじゃないですか。
       私のせっかくの「必殺」も十分に活かせずに……」
シグルド 「わかったわかった。前向きに検討するから。
      けど、今回はもうちょっと別のやり方で進めたいんだよ」
ノイッシュ「別の、というと?」
アレク  
「今度こそ俺とフュリーをくっつけてくれるんですか?」
シグルド 「いたのかアレク。背景の色の所為で文字にまで存在感が無いぞ。
       残念だが見切りペガサスに特に思い入れはないからなあ」
アレク  「とにかく今までと違ったことをやるなら俺たちを使ってくださいよ」
アーダン 
「俺、一回もクラスチェンジしたことないんですよ」
シグルド 「お前には見せ場があるだろ。第二章で」
アーダン 「すぐ奪われる追撃リングですか……他にも俺の隠しイベントはあるんですけど……」
シグルド 「まあ、そのうちな」

 一方そのころユングヴィでは……

ミデェール「エーディン様、いつものように味方の兵士はみんな死にました」
エーディン「もうちょっと頑張って欲しいわね〜。ま、これも「運命」だから仕方ないけど」
ミデェール「じゃあ、私も死にに行ってきますので」
エーディン「いつも大変ね」
ミデェール
「いえ、慣れてますから」

 敵将、ガンドルフと相対するミデェール。

ガンドルフ「さあ、おとなしくそこを退いてもらおうか」
ミデェール「悪役は何も知らないからな……やる気十分か」
ガンドルフ「何を言ってやがる! さあ、退け!」 
ミデェール「出来ればそうしたいけどね、「運命」のせいでそれも出来ないんですよ」
ガンドルフ「?? な、なら、死んでもらうぜ」
ミデェール「はいはい、さっさとお願いしますよ。あんまり痛くないように」
ガンドルフ「うるせぇ!」
ミデェール「グフッ……! や、ら、れ、た……ガクッ」
エーディン「随分演技派になったわね、ミデェールも。最初のころは本当に死にかけてたのに」
ガンドルフ「おお、美女だ。俺のものだ! つれて帰って妻にするぞ!」
エーディン
「はいはい、その手の台詞は聞き飽きました」
ガンドルフ「おおっと、抵抗しても無駄だぜ。さあ、俺の城まで来い!」
エーディン
「遅いわよガンドルフ。さっさと来なさい」
ガンドルフ「え……?」
エーディン「はあ……。最初は私がヒロインだって、みんな信じて疑わなかったわ……」
ガンドルフ「……とにかくこの城はデマジオ、お前に任せるぞ」
デマジオ 「へい……」

 エバンス城に向かうエーディンと、それに従うガンドルフ。

ガンドルフ「何かが……何かが違う」
エーディン「ほら、なにやってるの。日が暮れるわよ。あ、そうそう。そこの橋は壊しといて」
ガンドルフ「………」

 またまた一方、シアルフィ

アレク  「あ、ユングヴィ落城したみたいだな」
ノイッシュ「じゃあそろそろ出撃しますか? 
スピードリングも逃したくないですし
シグルド 「そうだな」
オイフェ 「あの……」
シグルド 「何だオイフェ」
オイフェ 「
いくら5回目のプレイだからって気を抜きすぎでは……」
アレク  「いいんだよ。どうせ俺たちの末路は決まってるんだから。運命って奴?」
オイフェ 「……それを言ったら僕なんか
      青春をすっぽかして中年化が決定してるんですよ……?」
シグルド 「生きてられるだけマシだろ……。じゃ、出撃!」
アーダン 「はい!」
シグルド 「アーダンは城守備ね」
アーダン 「……はい」

 こうしてあまりやる気も無く彼らは城の門を出た。
 それが恐ろしい運命の幕開けであることなど、イヤというほど知りつつも……

シグルド 「あ、私中心に攻めるから。経験値も私にどんどん回して」
ノイッシュ「私たちはともかく他のキャラの成長は……?」
シグルド 「まあ、それなりでいいよそれなりで」
キュアン 「おいおい、私のレベルも上げさせてくれよ」
シグルド 「おお、キュアン。久しぶり」
エスリン 「今度は私にエリートリングと星50以上の武器をちゃんと渡してよね。
       リーフの成長に影響するんだから」
シグルド 「ああ、それはもちろんだ。この前はそのおかげでセリスが随分嘆いてたからな〜」
フィン   「生まれても無い息子のことを懐かしげに語らないで下さい」
シグルド 「フィン、君にはきちっと働いてもらうよ。
       何しろ武器引継ぎが出来るのはセリスとリーフ以外に君しかいないんだから」
フィン   「は?」
キュアン 「ははーん、さてはあれか」
エスリン 「成る程〜。ついにあれをやるんだ」
シグルド 「ハハハ、二人に隠し事は出来ないな」

 謎な会話をかわしつつ、彼らはバーバリアンを虐殺していった。

フィン  「やあ、オイフェ君」
オイフェ 「フィンさん……なんか、生き残り組の僕達の方が苦労多そうですよね……」
フィン  「そうだな……4章でレンスターに帰らずに居残ってみようかな」
オイフェ 「……本気ですか?」
フィン  「冗談に決まってるよ。どうせ帰ることになるんだから……
      「運命」っていうのは意地悪だよ」
オイフェ 「はぁ。最初のプレイの時はもうちょっと緊張感があったんですけどね〜」

 と、シグルドの携帯に着信音「ファイアーエムブレムのテーマ」が流れた。

シグルド 「誰からかな。もしもし?」
アゼル  
「シグルド公子、僕の今回の相手はティルテュですか? それともエーディン?」
シグルド 「挨拶も抜きに性急だな、アゼル」
アゼル  「だって僕達の最大の関心ごとってそれじゃないですか。で、どうです?」
シグルド 「いや、あんまり考えてないから適当に」
レックス 「おいおい、それじゃあ俺は?」
シグルド 「おお、レックスか。君はこの前ティルテュとくっついて
      「待ち伏せ+怒り」をつくっただろ。
       あれで満足できないの?」
アーダン 「そうだ。満足しろ。そして俺とティルテュで同じ作戦を……」
シグルド 「アーダン……城から大声で自己主張、ご苦労」
アーダン 「これくらいやらないと忘れ去られそうですからね」
シグルド 「じゃ、その調子で城を守ってくれ」
アーダン 「………」
レックス 「で、俺は?」
シグルド 「あんまり深く考えてないんだ今回は。まあ、適当にやってくっついたらそれでOK」
レックス 「アンタらしくも無いな……まあいいか。アイラとくっついてもいいんだろう?」
シグルド 「OK、OK」
レックス 「あ、それと今回は
「斧だから」なんて理由で俺を留守番にしたりするなよ」
シグルド 「わかってるよ。勇者の斧までは地味だけどね。じゃあ、そっちの村お願い」
アゼル  「了解です」

 携帯をしまうシグルド。

キュアン 「相変わらず大変だな、シグルド」
シグルド 「まあな。ああ、そろそろスピードリングの村だ。誰が取るべきかな」
ノイッシュ「ここは私が」
エスリン 
「ノイッシュったら冗談きついわね♪」
ノイッシュ「………」
シグルド 「とりあえず……私が取るか。文句無いな?」
アレク  「あるって言っても聞かないでしょ」
シグルド 「まあな」

 そして近づくユングヴィ城

シグルド 「よう、デマジオ」
デマジオ 「シアルフィの騎士だと? 俺たちにかなうものか」
シグルド 「白々しい台詞、よく言えるな」
アゼル  「あ、ちょっと魔法の実験台になってくれる?」
シグルド 「おいおい、いつの間にこっちまで来てたんだアゼル。
      それにこんなところでレベル上げは禁止だぞ」
アゼル  「そんな〜。ひょっとしてファーストプレイの時みたいに僕を使わない気ですか?」
シグルド 「いや、とにかくさっさとクリアしたいからな」
デマジオ 「おい! お前等俺の恐ろしさを」
シグルド 
「じゃ、制圧」
デマジオ 「……お、俺との戦闘は?」
シグルド 
「省いたよ」
デマジオ 「は、省いたって……」
シグルド 「どうせお前なんか一矢報いることも出来ないだろ。
       そろそろキーボードを打つ手も疲れてきたんだ」
デマジオ 「キーボードってそんな……」

 ユングヴィ城を制圧した。

シグルド 「考えてみればユングヴィってうちのシアルフィとは別の公爵家の領地なんだから、
       私が制圧するとまずいのか? このまま私の領地にしたいもするが……」
ミデェール「グランベルの上層部が黙ってませんよ」
ノイッシュ 「ミデェール。随分元気だな」
ミデェール「奴の斧は避けましたから。避ける瞬間にトマトをつぶしておいたんですよ」
ノイッシュ 「さすが、殺されなれてる奴は違うな」
ミデェール「
見せ場ですから。
       で、シグルド公子。今回、私はエーディン様ですか? それともブリキッド様?」
シグルド 「まあ、それは適当に」
ミデェール「?? 妙ですね。計画恋愛がモットーのあなたが」
レックス  「そうそう、俺たちのときも適当なこと言ってたし、どうなってるんだ?」
アゼル  「ちょっと怪しいよね」
キュアン 「まあまあ、シグルドにはシグルドの考えがあるんだろ」
フィン   「何企んでるんですか……」
エスリン 「それは見てのお楽しみ」
アゼル  「怪しい」
レックス 「怪しい」
フィン   「怪しいですね……」
シグルド 「さあ、そんなことはどうでもいい。エバンス城に向けてさくさく行くぞ」

 一方、エバンス

ゲラルド  「ガンドルフ王子。それがユングヴィの姫ですか。美女ですな。よだれが出ますぜ」
ガンドルフ 「がはははは。そうだろうそうだろう」
エーディン 「ま、獣にも私の美しさぐらいはわかるってことかしら」
ガンドルフ 「………」
エーディン 「さあ、こんなところに長居は無用。ガンドルフ! 行くわよ」
ガンドルフ 「あ、ハイ……」
エーディン 「そうそう、デマジオ。無駄だと思うけど少しはシグルド様たちを苦しめて見せなさい」
ゲラルド  「へ、へい……
(俺ゲラルドだよ)

 マップ外に消えるエーディンとガンドルフ。
 さらに一方、マップ上方に現れる影。

アルヴィス「やれやれ、シグルドのことだ。また蛮族の相手を私にやらせるつもりだろう。
       だいたい銀の剣ぐらい、公爵の私がたった一人で
       しかも徒歩で渡しに行くようなものか?
       武器屋の親父にでも頼めばいいんだ」

 愚痴りつつとぼとぼと歩いてくるのはファラフレイムを操るアルヴィス公爵。

シグルド 「ああ、来た来た。よし、蛮族どもをひきつけておいて我々は逃げるぞ。
       南下してきたアルヴィスがちょうど蛮族と鉢合わせになるように」
アゼル  「相変わらず利用されてるな、兄さん」

 猪突するバーバリアンにやはり巻き込まれるアルヴィス。

アルヴィス「私のファラフレイムは断じてこんな蛮族相手に、
       しかも
アニメーション「マップ」で使うような魔法ではないはずだ!!!」
キュアン 「文句をいいながらもさすがはアルヴィス。1ターンで全滅だな」
アルヴィス「ハァ……ハァ……。シグルド、人使いが荒いのもいいかげんにしろ」 
シグルド 「どうも、ご苦労様です。じゃ、銀の剣、もらっときますから」
アルヴィス「相変わらずそれを星50以上にして子供に受け継がせる気か?
       少しは私の未来のことも考えてだな、もう少し弱い子供を……」
シグルド 「ああ、そのことですがね、ちょっとお耳を拝借……」
アルヴィス「………なんと、ついにあれをやるのか」
シグルド 「そんなわけで、星50くらいはやらないと」
アルヴィス「そうか……。まあいい。私の出番はとりあえず終わりだ」
シグルド 「では、5章でまた会いましょう」
アルヴィス
「ああ、早く来いよ」
アゼル  「兄さん、そのファラフレイム、僕にも貸して下さいよ」
アルヴィス「どうせ使えないだろお前は。エルファイアーで十分だ」
アゼル  「じゃあそのリカバーリング。みんな欲しがってるよ」
アルヴィス「私だってこの腕輪、
       10章で使いたいくらいだ。ゲストキャラの時だけだからな、これがあるのは」
アゼル  「もう、けちだなあ」
アルヴィス「言ってろ!」

 去っていくアルヴィス。

シグルド 「さて、アルヴィスのおかげでエバンスはがら空きだ。さくさく制圧するぞ」

 エバンス城を制圧した。

ゲラルド 「ちょっ……俺は?」
シグルド 「省略省略。どうせ何も出来ないんだから」

 序章・終了……

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