魔神英雄伝ワタル

各界層紹介
 
かなりネタバレ含みます。

第一界層:天災のエリア

 地震や雷といった天災に悩まされるエリア。
 ワタルが最初に冒険を始めたエリアだけあって、シバラク先生やクラマとの出会いや、へん玉の入手、一話に一つの村を訪れ、一つの魔神を倒すなど、「ワタル」全編にわたるお約束を確立させたエリアと言えるだろう。
 へん玉ゲットの時の、TRPGのリドルを思わせる仕掛けも秀逸。

 「凄い奴がやってきた」が口癖のシュワルツネッガーのそっくりさん、シュワルビネガーや色男気取りのサンダーブルー、子供の頃、デブと言われたことを見返してやるためだけに悪に走り村を支配し、村人に無理矢理大食いさせて太らせようともくろむマッドで小物なタンクーガーなど、コメディ要素満載の悪役キャラもこの時点で定着していた。

 また、デフォルメ体型でありながら第一話からバトルゴリラの弾丸を切り払う龍神丸や、二刀流で敵の攻撃を受け止める戦神丸など、迫力のバトルシーンも満載。
 お邪魔キャラの空神丸や、最後に助けに来る幻神丸もお約束。

 龍神丸が空を飛べない、と言う弱点も第三話にして早々とあかされており、その際の

「(粘土で作ったときに)翼を作っておけばよかった…」

 というワタルのぼやきが面白い。

 魔神はバトルゴリラ1号2号にヘルコプター、ゲッペルン、セカンドガン。
 全てミリタリー色の強い魔神で、今になってみてみると、なかなか渋い。
 ボス、クルージングトム操るセカンドガンを倒し、クリアアイテムの神部の笛をゲット。見事第一界層を元に戻す。

 わずか5話のストーリーで、「このアニメはずっとこのお約束で行くんだ」と、確信させてしまうあたり、「七つの界層に分かれている」という設定を上手く利用した手法と言えるだろう。

 ところで、初っ端から龍神丸が「ダサイ魔神」と呼ばれているが、あからさまに主役メカを「ダサイ」と言い切ってしまうのは、ちょっと珍しいのではないだろうか。
 動きを見ていると本当に格好良いのだが。正に面白カッコイイといったところか。

第二界層:逆転のエリア

 逆転と言うからには9回裏100点差から勝利でもするのかというとそんなわけでもなく、天地や男女、昼と夜が逆転したエリア。
 だからといって逆立ちで歩く羽目になっている村人たちが笑える。
 ニンニク好きで十字架コレクターの吸血鬼がいたりと、その逆転っぷりは徹底している。

 魔神はフランケン1号2号にドラクロス、ムーンウルフにスケルバット。ホラー調のモンスター魔神軍団だった。
 バトル面では龍牙拳や炎龍拳など、新必殺技も次々と登場したが、特筆すべきはドラクロス戦。
 なんと第8話にして早くも必殺の登龍剣が防がれる!
 登龍剣の動画や音楽は毎回使いまわされているため、「この音楽で、この動画が出てきたらフィニッシュの合図だ」と、完全に刷り込まれていた子供たちはかなり意表をつかれた。

 その後、敵を通常戦闘でひるませた後、突きの形に変化させた応用型の登龍剣で止めを刺す。
 これは一話完結のパターンアニメで必ず突っ込まれる「最初から必殺技使えば?」という疑問への答えでもあるだろう。相手を吹っ飛ばした後や、隙を見せた時に「今だ!」と、剣を構える姿がこの後、定着していった。

 他にも、龍神丸を呼べずにワタル単独で戦うなど、「パターン破り」が早くも試みられており、子供たちをあきさせなかった。
 中でも最高のパターン破りはクリアアイテム、真実の鏡をめぐる第9話〜第10話だろう。
 探索の末、クリアアイテムを手に入れて世界を元に戻すというパターンのはずが、なんと敵に鏡を破壊されてしまう。
 しかもそのまま次回へ続く。ワタルが龍神丸に乗ったままで話が終わるという今までに無い展開。
 第10話では珍しくワタルが龍神丸から降りるシーンが挿入されるなど、見所満載。最後は、「鏡とは実は……」という、これまたリドルを思わせるどんでん返しで締める。

 クリアアイテムの入手、というパターンも、まだ第一界層でしか行われていない以上、「パターン」と呼ぶのもおかしい気はするのだが、そこが「界層ごとにわかれた」という設定をやはり上手く使ったところ。
 第一界層でこうだったんだから、第二界層でも同じように進むだろう、という安心感を植え付けておいて、そこを覆してくるのが「ワタル」の面白さである。

 敵キャラもこの第二界層はハジけており、まずはボスのデス・ゴッド。
 「北斗の拳」のモヒカン全部を演じたという千葉繁さんの演じる死神のような姿の三枚目悪役。
 このキャラがスパイのクラマと共にイロイロと悪巧みをするのだが、Dr.サッカ・サマーをはじめとする部下たちに振り回されっぱなしで、苦労人二人のコンビが笑いを誘った。
 あげく、部下を倒されて「許さ〜ん」といきり立ちながらも、クラマに「じゃあ戦うか?」と聞かれて「イヤ、今日はバアさんの命日だから…」と、帰ってしまうのだから最高。死神のクセに命日って……。

 しかしそんな彼もバトルではなかなか格好良く、生身ではいくら斬られても死なない不死身っぷり(インチキだけど…)を見せ付け、魔神も、足を掴まれるや否や二つに分離して龍神丸を振り落とし、バラバラになった骨も即座に再生。
 どこかで聞いたような必殺技の「スケルバット流星拳」は、龍神丸も「一秒に100発以上の突きだ!」と、ノリノリ! どこの聖闘士だ
 さらに掛け声が北斗百裂拳のような「あ〜たたたたたた……」なのだから……。
 足の負傷が響いて登龍剣を使う隙を与えてしまったが、なかなかの強さだった。

 もう一人、第二界層の敵キャラとしては、忘れてならないのがDr.サッカ・サマー。
 二度にわたり登場し、珍発明でワタルたち(クラマとデス・ゴッド含む)を苦しめた彼だが、彼の最大の発明、喋る魔神フランケンが笑える。なんか声がカワイイし……
 自由自在に喋る龍神丸を見て、「私の人生は何だったのでしょ〜〜」と、自分の殻にこもってしまうサッカ・サマー。再登場では流暢な方言を操るフランケン2号を持ち出し「どうだ、驚いたか」と勝ち誇るも……

「ハッハッハッハッハ! そげんこつで驚きゃーせんわい」


 各地方の方言を喋り捲る龍神丸に完敗。

「うるさーい! 魔神が言葉なんか喋れて何が偉いんだ!」

 と、ついには自分の人生を否定するような発言まで……
 こうした個性豊かな悪役キャラがとにかく笑えた第二界層だった。


第三界層:灼熱のエリア
第四界層:極寒のエリア

 第三、第四界層から、いよいよ物語は佳境に入っていく。
 第三界層の序盤までは今までと同じパターンで、町をめぐって魔神を倒していったのだが、ボス戦まできたところで、なんと第三界層を元に戻すためには、第四界層にある極寒の剣を使わなければならないという一大サプライズが発表される!

 龍神丸と仙人の力を使ってワタルだけを第四界層に送るものの、その時点で龍神丸がダウン!
 吹雪吹き荒れる第四界層でワタルはただ一人、極寒の剣を目指さなければならない!
 一方第三界層では、うっかり極寒の剣のことをワタルたちに喋ってしまったクラマがドアクダーの四天王、ザン兄弟に拷問を受ける。シバラク先生とヒミコがそれを救出するものの、クラマは保身のために逆にシバラク先生たちを……
 スリル満点の二元中継でお送りする第三界層、第四界層。シリアスな展開に視聴者は釘付けとなった。

 ところで、CM前のアイキャッチは「ワタル」にしては影が強く、劇画調で描かれているのだが、こうしたハードな展開には良く似合っていた。

 仲間たちから離れて戦うワタルと、新パートナーの少女ユーキの関係も見所。
 変に恋愛関係を強調せずに、共に戦う信頼しあったパートナーとして描いているところに、逆に二人の強い結びつきを感じる。たった6話の出演ではあったが、ユーキの人気は未だ根強い。

 第四界層では今までと異なり、「町」というものがほとんど登場せず、ひたすら吹雪の中を行軍する内容になっているのも注目点。孤独な戦いと、その中で生まれていく新たなパートナーたちとの絆が素晴らしい。

 余談だが、第二界層で手に入れた召還獣(?)タマンゴも、ここにきて存在感を増した感がある。
 今までは地味な存在だったが、孤独なワタルに対して、唯一、以前から変わらぬ仲間として登場するのだからその心強さもひとしお。
 新登場のセンモスもユーキの指示により、たびたび龍神丸の危機を救った。

 第三界層ではクラマの葛藤が見もの。これについてはキャラ紹介のクラマ参照のこと。

 そして龍神丸と空神丸の合体や、第四界層のボス魔神・ギーガンを戦神丸が倒すというパターン破りを加えながら、四天王ザン兄弟操るガッタイダーと、早くも対戦。
 なんとか撃退するものの、龍神丸が死んでしまうという、最後まで衝撃の展開!
 これまでのマッタリとした展開を大きく変えた第三、第四界層だった。

 ユーキとの別れがやけにアッサリしたものだったのがちょっと残念。


第五界層:公害のエリア

 ヘドロとスモッグの漂う公害のエリア。
 基本的には第三界層前半までのマッタリ路線に戻るのだが、序盤は龍神丸不在の中で戦神丸、空神丸や生身のワタルが奮闘したりとパターン破りの精神を忘れない。

 そして空神丸の死と龍神丸の復活。龍王丸への変身、クラマとの別れ。
 さらに幻神丸と幻龍斎の合流、虎王の登場と、イベント満載の第五界層。
 ……の、割にちょっと地味な印象を受けるのは何故だろう?

 個人的な考察として……今までの界層では、町ごとに異なった被害を受けていて、それが敵キャラの個性にも繋がり、面白かった。今回はどこに行ってもヘドロとスモッグだらけだったのが地味な印象を受ける原因ではないかと思う。ぶっちゃけると、敵キャラが地味。敵魔神も地味。それぞれに味のあるヤツらなのだが……おじさんだらけだったのも、子供心を掴みづらかったかもしれない。

 そんな中で、ヨメハーンムコハーンの夫婦は名前だけで笑わせてくれる貴重な存在だった。

 緑龍にまつわる謎解きでは久しぶりにリドルも復活し、第三、第四界層でシリアス方面に傾いた流れをもう一度元に戻そうとしている印象を受けた。

 細かいところだが、小人の「コロガッテル族」が「転がってる」と「コロボックル」のダブルミーニングという点も面白い。


第六界層:魔法のエリア

 今度は悪い魔法使いに様々な呪いをかけられている魔法のエリア。
 何といってもボスのビビデ・ババ・デブーのキャラが立っていることが最大の特徴だろう。
 5人の子供を抱える肝っ玉母さんだが子供たちのハッチャケっぷりに毎回毎回苦労したりヒスを起こしたりと忙しい。第二界層のデス・ゴッドとクラマを髣髴とさせるような活躍ぶり。
 
 ちょっとした仕掛けの面でもなかなか上手く作っており、たとえば初登場で若い女に化けて遊んでいたビビデ・ババ・デブー。
 ただのギャグかと思いきや、話の最後でワタルに(偽の)情報を教える若い女が、実は彼女の変装……という伏線になっているなどの演出が心憎い。序盤に彼女が使った「千光の腕輪」が、実はクリアアイテムというのもいい感じ。

 子供たちもまた、名前からしてハジけている。
 最初の「ビビデ・オージ」や最後の「ビビデ・アラビアン」は、まあいいとして、「ビビデ・シシカバ・ブー」やら、「ビビデ・セイキマ・ツー」やら……
 赤ん坊のような格好をした「ビビデ・チビット・モレーテル」の元ネタは一瞬、迷ったが、正解は「ちびっと漏れてる」……コメディ路線な一家である。

 ワタルたちが巻き込まれる事件も、動物にされる、子供にされる、女装させられるなど、インパクトの強いものが多く(女装イベントでメインを張るのがシバラク先生というところが良いところ…)見るたびに楽しめた。

 残念なのは、ゴーストンを除けは、エレファントムとヘルライガーしか敵魔神が登場しなかったことか。
 魔神コレクションが各界層につき、2体までしか発売されないという事情も無関係ではないだろう。
 また、龍神丸の後に龍王丸が控えているため、戦神丸や幻神丸の出番が減った点も少々気になる。
 ……冷静に考えると、今までもそれほど活躍はしていなかったが……



魔幻ゾーン

 ワタルが勇者の心を試される魔幻ゾーン。
 コミカルに描かれているものの、ギロチンの刃が時計の針となって迫ってくる演出などはホラー調。敵ボスの魔婆もこれまでにないリアルな幽霊っぽさが漂う不気味なキャラである。

 CM前のアイキャッチも、ワタルとヒミコのローラースケート…というコミカルなものから再びシリアスな龍王丸とワタルの姿に変更され、物語がいよいよラストに向かいつつあることを思わせる
(ちなみにワタルとヒミコのアイキャッチは、コミカルなイメージの総集編では再び使用されている。話の内容を見てアイキャッチまで変えてしまうこの配慮の細かさ!)

 さて、魔道門は勇者が元の世界に戻り、幸せで自分にとって何でも都合の良い日々の中で「ここで暮らしましょう」と誘惑されるという、割とよくあるパターンなのだが、最終的にその世界を拒否するワタルの叫びが、半分以上、泣いているように聞こえて切ない。
 
「みんな…みんな偽者だ−−−!!」

 心のどこかに、そんな都合の良い世界が本当にあったら…という気持ちがある以上、どんなに正しいことであっても、その都合の良い世界を否定するのは一抹の悲しさが残るんだろうな…などと、今になって見直すと思ってしまう一品。

 ちなみに、偽の世界でワタルがやっていたゲームはPCエンジンで発売されたワタルのゲーム。
 招き猫を倒してお金を集めまくった記憶が蘇る……

 続く魔風門は番人、「風の谷のウマシカ」(……)によるクイズ合戦。
 風を捕まえてみせろ、というリドルは子供の頃から心に残っていたほど上手い謎かけだった。

 魔天門は無理難題を要求され、諦めたら最初からやり直し、と言うトンでもないマラソン地獄。山登り、ロッククライミング、延々と続く階段昇り……諦めて地上に落とされたワタルの独白が印象深い。

「仕方ないよな……あんな長い階段、だれだって途中で諦めるよ……」

 人生とは重い荷物を背負って坂道を歩いていくようなもの、とはよく言ったものだが、長い階段を人生にたとえて考えると、とてつもなくハードな一言。
 ワタルたちを諦めさせようとするデブルの演技もいい味を出している。
 落ち込んでやる気をなくしたワタルを励まそうと、珍しくヒミコのスカート姿が見られるのもまた一興。

 最後の魔界門は魔術によってワタルが悪い子(子ってのがワタルらしい)にされてしまう。
 田中真弓さんの演じる悪ワタルの演技にも注目。で、最後はほっぺをつねって元に戻すというナイスボケ。ヒミコ、偉い!

 ヒミコといえば、この魔幻ゾーンのあたりから全体的に作画の質がどんどん高度になっていき、特にヒミコは終盤、かなり綺麗に描かれていた。
 虎王が惚れるのも、これなら納得?

第七界層

 ついにラストのエリア。
 序盤はユーモラスな敵キャラ、怪傑ゾロリとサンチョパンダが引っ張る。
 美形で三枚目のゾロリは終盤のハードな展開においても影が薄くなること無く、しっかりキャラ立ちしていた。
 38話のラスト、虎王を探しに威圧感ムンムンで出陣したドンゴロを、次の話でアッサリ騙し、道に迷わせるなど、シリアスとギャグを混ぜこぜにしてしまうなかなかの迷キャラ。

 魔幻ゾーンで唯一、強化型が登場しなかった第三界層ボス魔神・キングレラクレスのパワーアップ魔神・カイザーヘラクレスが登場するなど、ちょっとしたファンサービスも。
 40話ではツインカーメンを龍神丸のままで倒し、久しぶりの登龍剣を披露するなど、パターン崩しも忘れない。

 また、ここにきてゲットした重要アイテム「龍神の盾」が、実はタイトルコール時のバックに描かれているあの盾だった、という小さな仕掛けも冴えている。ちなみに盾の裏にある二つの剣のうち、一つは王者の剣。もう一つは龍王の剣。タイトルコールと共に飛んでくる玉はへん玉である。
 ワタルの軽快な外見を崩さないために、龍神の盾は普段は腕輪の中に消えている…という設定もナイス。
 龍王の剣に関しては早々と登場させておきながら、全く抜ける気配も無く、そのまま最終決戦に突入してしまう展開も凄い。

 他には、一度は倒されるもののパワーアップして復活した戦王丸、幻王丸に加え、戦線に復帰したクラマの空王丸の三体でザン兄弟のガッタイダーと戦う場面も、脇役たちの活躍シーンとして印象深い。
 ちなみにこのガッタイダー、第四界層でワタルと戦って以来、ずっと修理中だったが、ついに最後まで直ることなく、修理中のまま出撃した。
 ドアクダー軍団の整備がよほどマズいのか、ガッタイダーの構造がそれだけデリケートなのか……。
 最後は新必殺技でガッタイダーを倒すシバラク先生、お見事。

 このように様々な見せ場が入り乱れる第七界層だが、最大の見所といえば、やはり虎王だろう。
 ワタルとの友情を確かめ合う微笑ましいエピソードの直後、ワタルが敵と知り、瞳から光が消えていく様。そしてワタルと切り結ぶ虎王の形相。
 父親がわりのドンゴロを他ならぬドアクダーに殺され、逆上する様など…
 キャラ紹介でも書いたことながら、今までチョイ役にすぎなかった彼がついにストーリーの主軸となって話を動かしていた。

 ドンゴロの死もかなり切ない。
 何しろ、重傷を負ったドンゴロに忍部一族に伝わる万能の塗り薬を使おうとして、全く効き目が無いことに気づいたヒミコの台詞がこれ。

「そっか…この薬、悪い人には効かないのだ。このおっさん悪い人だから…」

 ドラゴンボールではベジータだって生き返ったのに!
 虎王に忠誠を誓うドンゴロを率直に「悪人」と言ってしまうヒミコの幼さが逆に胸に突き刺さる。
 同時に、ドンゴロと虎王がドアクダーに撃たれ、哀れな犠牲者扱いとなったこの場面でも、ドンゴロを「悪人」と、容赦なく断言するスタッフのシビアな判断も……

「確かに…確かに善人じゃなかった。
 だけど、俺様には優しかったんだ……」

「父上よりも、ずっと……!」


 この間、龍王丸をはじめとする4体の正義魔神によるドアクダーとの戦いが続く。
 四つの魔神の合体技などで盛り上げるも、ドアクダーを倒すにはまだまだ至らない。
 死を覚悟してドアクダーに突撃する虎王と、そうともしらずに虎王から形見のマフラーを貰って無邪気に喜んでいるヒミコの対比も最終決戦ムードに拍車をかける。

 そして、ラストバトル。
 龍王丸が力を使い果たして、ついに石に。
 最後の決戦に赴くのは、なんと龍王丸から飛び出した金色の龍とワタル自身!
 龍王丸を操縦するためのアンテナと台座程度に思われていて、既に背景扱いだったあの龍が龍神丸そのものとしてワタルと共に戦う!

 これこそ作中最大のパターン崩し!!

 ギリギリで龍王の剣を抜き、七つの龍神を覚醒させたワタルにドアクダーは驚愕!

「あ、あれは……神部七龍神!!

 神部七龍神(しんぶしちりゅうじん)!!
 もう、このワードだけで興奮度30%Up間違いなし!
 単なる固有名詞のクセに格好良すぎるぞ!
 この時流れる音楽が初めて龍神丸に乗った時に一度限り流れた音楽と同じというのもハマった演出。
 始まりと終わりに同じものを持ってくることで、長かった旅を一瞬で振り返らせてくれました。

 ところで、七つの龍神という設定は魔神ゾーンの紫龍や水晶の洞窟での白龍から聞けたものですが、このシーンに至るまで、その七つが誰だかわからなかったのは管理人だけでしょうか?

 紫龍と白龍、第四界層のファイヤードラゴンは確定として……
 第五界層の緑龍は単なる模様みたいなものだけど、やっぱり七つのうち一つにやっぱり数えるんだろうなあ、とか。イロイロ考えたものの
 残り三体は見当もつきませんでした。
 答えは龍神丸と、へん玉の台座になっていた二つの龍の像!
 二つの像は毎回オープニングに出てたのに気づかなかった管理人……

 そしてドアクダーを倒して平和を取り戻したワタルが仲間たちと別れるシーン。
 ヒミコたちの前では笑って別れたものの、龍神丸との別れには涙を流し、本当は分かれたくないと本音をさらけ出すワタルに対し、父親役の龍神丸は……

「私は常にお前のそばにいる。
 お前が空を見上げたとき。雲の中、虹の中、星の中に私はいる」


 そして元の世界に戻ったワタルは粘土の龍神丸を手にし、笑いながら家路へとつく…

 と、ここで終わらない魔神英雄伝ワタル。

 最終回にもう一度総集編をやってしまう明るさというか、懐の深さが嬉しい。
 ヒミコがここで見せた「忍法・テレビの中からコンニチワ〜」は、実は作中で一番、心に残っている忍法。
 最後の、ヒミコとの別れも、内心ではもう会えないのでは、と寂しげに感じている表情のワタルに対して、何の疑いも無く「また会える」と信じているヒミコの軽い雰囲気の対比が見事。

「んじゃ、またね〜」

 と、明日また会えるかのような態度でテレビの中に潜り込み、別れるヒミコ。
 そして日常生活に戻っていくワタル……と、全てが印象深い。

 その後、ヒミコの言葉通り、OVAに続編にラジオドラマに、と何度もまた会うことになるワタルとヒミコ(そして視聴者と「ワタル」)なのだが、それはまた別の話と言うことで…