魔神英雄伝ワタル

突然だが、ワタルのDVDを買ったのでワタル特集を開始するッ!

はっきし言って、面白カッコイイぜ!

ワタルとは…?

 1988〜1989にかけて放送されたロボットアニメ。
 異世界、創界山に召還された小学四年生の「救世主」ワタルは魔神(マシン)龍神丸に乗り込み、仲間と共に悪の帝王ドアクダーと戦う。

 まず、最初の特徴はファンタジー世界におけるロボットということ。ドラクエをはじめとするファンタジーRPGが日本に定着し始めた時期だけに子供たちの熱中度も高かった。
 世界観だけでなく、町から町へと旅をし、町で起きた事件を解決、情報を聞き出し、重要なアイテムを探索…といった展開も子供心を強烈にキャッチした。

 舞台となる創界山が七つの界層に分かれていて、それぞれの界層ごとにボスキャラが存在。
 ボスを倒すごとに一つの界層が開放され、灰色にされた虹の色が一つ、元に戻るという設定も「ステージクリア」の達成感を味わわせてくれる。

 さらに、魔神を含めた全てのキャラがデフォルメ体型であることも大きな特徴。基本的にコミカルな路線を貫き、敵のボス級のキャラでさえ、ふんだんにギャグを飛ばす。
 しかし時折、シリアスな展開を見せ、その落差がこれまた子供心に響いた。
 キャッチフレーズの「面白カッコイイ」がこのアニメの本質を見事に表している。

 ロボットアニメがリアル路線、マニアック路線に踏み込んでいく中、子供のための良質なロボットアニメとして、ロボットアニメ史に残る名作と言えるだろう。

 ちなみに管理人が初めてハマったロボットアニメがこれ。
 ついでに救世主、という言葉を初めて聞いたのもこのアニメだった。

主要キャラ & 魔神紹介

戦部ワタル
 主人公。小学四年生の面白カッコイイ救世主。
 明るく、勇気があり、優しく、ドジで、時折弱音も吐く。子供たちが共感できる等身大のヒーローといった感じ。
 装備品は「勇者の剣」「万能ハイカラ靴」「へん玉」など。

 防具として胸当てと肩当てをつけているものの、簡略化されたデザインのおかげで「武装」という雰囲気が無く、軽快なイメージ。
 ファンタジーの勇者といえばガチガチな武器防具を装備していることも多いのだが、ワタルのこのデザインはコミカルな冒険をメインにした作風にピッタリ。

 万能ハイカラ靴もまた素晴らしい。かかとを2回鳴らせばローラースケートに、1回鳴らせば普通の靴に変化するこの靴は全編を通して使用された。
 軽快なステップでジャンプしてかかとを2回鳴らし、敵陣に突っ込んでいく姿は「ワタル」の風物詩といえる。「ローラースケート」というのも当時流行っていた要素で、上手く流行を取り入れたアイデアである。

 へん玉は第二話でゲットしたアイテム。
 「へん玉・レッド」の掛け声で赤い部分をぶつけるとスーパーボールのようにバウンドして、複数の敵に連続してヒットする。敵の雑兵、ブリキントンを相手に序盤はよく使用されたが、後半にいくほど使用頻度が減っていった。
 「へん玉・ブルー」の掛け声で使う青い部分は、跳ね返らない代わりにダメージが大きく、魔神をも、のけぞらすほど。魔神が使えない場合などに頻繁に使用された。

 界層を進むうちに他のアイテムも次々と取得していき、第三、第四界層では「極寒の剣」「灼熱の剣」をゲット。二つの剣のパワーが勇者の剣に宿り、「王者の剣」にパワーアップした。
 第六界層では千光の腕輪。第七界層で龍神の盾、そして龍王の剣をゲット。
 また、龍神丸が龍王丸に変身すると、ワタル自身も白い全身鎧に身を包む。
 この鎧は全国の子供たちからの「お前が鎧着てどーすんねん!」という突っ込みも軽く跳ね返す強度を誇る。(大嘘)

 声優はドラゴンボールのクリリンや、今でいえばワンピースのルフィなどでおなじみの田中真弓さん。今も昔も少年役をやらせたら超一流の声優だけに、ワタルの声もハマっている。

 「龍〜〜神〜〜〜丸〜〜〜〜!!」
 「パワー全開!」「変身! 龍王丸〜〜〜!!」

 そんな絶叫調の名台詞がこれほどマッチするのも珍しい。
 そもそも「パワー全開!」なんて、文字だけ見たら何が名台詞なのかわからないというのに、田中真弓さんの声で叫ぶと立派な名台詞になってしまうのだから役のハマりっぷりが伺えるというもの。
 
「はっきし言って、今日も面白カッコイイぜ!」


龍神丸
 ワタルが乗り込む主役メカ。
 3.5頭身程度のデフォルメ体型ながらかなり力強いアクションを見せ、敵の弾丸を切り払って突進していく姿などはド迫力!
 ワタルが勇者の剣を振りかざして「龍神丸〜〜〜!」と叫ぶと、「おおーう!」と異空間から現れる。

 他の魔神とは違い、操縦席は龍の頭になっており、角を掴んでワタルが指示を出すことで動かせる。必殺技を使用する際にはワタル自身も技に応じたポーズをとり、龍神丸がダメージを食らうとワタルも大きくのけぞる。

 龍神の化身であるため、自分の意思を持ち、言葉も喋る。
 フランケン2号との戦いでは流暢な方言まで操ってみせた。シリアスでエコーの架かった龍神丸の声(声優:玄田哲章さん)で名古屋弁、博多弁、北海道弁と、次々と方言を披露するシーンは大爆笑必至。

 普段は冷静にワタルにアドバイスを送り、時には叱咤激励するなど、父親的役割を果たしていた。
 ちなみに田中真弓さんと玄田哲章さんの声は、「勇者とそのロボットではない、成長する子供とその父親」というイメージで指名されたとか。正にその通りの関係だった。

 主役メカらしく多彩な技を使用。それぞれ見ていくと


・登龍剣
 大きく振りかぶって敵を一刀両断にするド迫力の必殺技。
 敵を突き刺す形に変化させた応用バージョンも存在。
 龍王丸の鳳龍剣よりもこちらの方が好き、という子供も結構いた。
 全ての必殺技にいえることだが、技使用時に
 画面上に文字が浮かび上がるのも格好いい演出。


・極寒登龍剣
 第三界層のボス魔神、キングヘラクレス相手に一度だけ使用した必殺技。
 極寒の剣を使い、相手の炎を氷で無効化しながら一刀両断に切り捨てた。

 
・火炎登龍剣
 第四界層で四天王ザン兄弟の合体魔神、ガッタイダー相手に
 龍神丸が命がけで使用した涙の必殺技。
 龍神丸の内部に浮いている謎の球体から剣にパワーを宿し、
 そのエネルギーで敵を突き刺す。
「これが火炎登龍剣だ!」
 そしてその直後……龍神丸の命もまた、燃え尽きるのであった。


・龍牙拳
 肩についた龍の牙をブーメランのように飛ばして攻撃。
 第三界層でファイヤーバック相手に使用した時が最も印象的。
 つばぜり合いの中、遠隔操作のカッターを押し付けられ、絶体絶命と思われた時、
 龍牙拳でカッターを切り裂き、見事に脱出!
 手が使えない状況で、肩から射出するタイプの龍牙拳を使って
 窮地を切り抜けるという機転はお見事。
 空神丸との合体で「真空龍牙拳」に名称変化したこともあった。

 
・炎龍拳
 ベルトの中心から炎の球を取り出して、振りかぶって投げつける。
 遠距離攻撃技として使いやすいのか、たびたび使用されていた。
 しかし一番印象的なのは第三界層ボス魔神、キングヘラクレスの炎龍拳返し。
 サッカーのボレーシュートのような華麗な足捌きで炎龍拳を打ち返す姿は
 敵魔神ながら思わず拍手。
 でも中の人は不細工。目いっぱい惨め。


・龍雷拳
 前期OPの最後に龍神丸が使っていたことで有名。
 両肩の龍のマークを実体化させ、雷に変えて打ち出す。
 本編ではなかなか登場しなかったことから、登龍剣以上の必殺技かと思われたが
 結局は他の技と同じ程度の扱いだった。
 電気系の技だけに、敵魔神の回路をショートさせたこともある。


・飛龍拳
 左右の脇のあたりについた穴から鎖を射出して敵に突き刺し、捕らえる技。
 手を使わずに、正面に射出するという点が使いやすいのか、
 登場からしばらくの間、かなり使用頻度が高かった。
 欠点は使うときのワタルのポーズが格好悪いこと。



龍王丸
 龍王丸が復活し、空神丸の魂と合体した姿。
 ワタルが「パワー全開!」「変身! 竜王丸!」と叫ぶと空神丸の魂が飛来し、龍神丸と合体して龍王丸に変身。
 それまでの姿よりも鋭角的でスマートなデザインになる。

 「変化・鳳凰」の掛け声で鳥の姿に。「変化・竜王」の掛け声で人型にチェンジ。
 龍神丸の欠点であった「空を飛べない」という点を克服している。
 また、龍神丸には無かったシールドがついており、敵の攻撃を防ぐことが可能。
 
 必殺技は龍神丸が使用した必殺技に加え、
 鳳凰形態での技を中心に、いくつか追加されている。


・鳳龍剣
 登龍剣に代わる新たな必殺技。
 剣から光の鳥を打ち出し、敵を切り裂く。
 しかし最初の頃は見た目が飛び道具的になっており、
 剣で一刀両断にする登龍剣の方が好き、という子供が意外と多かった。
 そのためか、鳳龍剣は毎回使いまわしの動画だった登龍剣とは違い
 使うごとに新しい絵で描かれていた。
 製作サイドの試行錯誤が見受けられる。
 分離した敵には登龍剣のように二つまとめて一刀両断に切り降ろし
 ある時は敵とすれ違いながら切り捨てるなど、
 「次はどんな鳳龍剣が見られるのか」というのがある種の楽しみとなっていた。


・鳳龍氷河剣
 剣から冷気を発し、炎で苦しむ味方を助けるという、珍しく援護タイプの技。
 敵を氷付けにするのに使えば……と、誰もが思うところだが、
 結局一度きりしか使用されなかった。
 ちなみに、何の説明もなく龍王丸が冷気を操っているが、
 これは王者の剣に極寒の剣の力が宿っているためと思われる。


・鳳雷波
 鳳凰形態の時に口から打ち出すことができるバルカン砲。
 空中からの牽制などに役立った。


・鳳牙弾
 ワイヤー付きの爪を射出し、敵を引っ掛けて動きを阻害。
 また、そのまま敵を引っ張って投げ飛ばしたりと、
 かなりユニークな使われ方をされていた。
 この技で敵を投げ飛ばした後、
 それを追いかけて鳳龍剣、というパターンも多かった。

 他にも翼が剣になる、という武器もあるのだが、結局使われることが無かった。



剣部シバラク
 ミヤモト村出身の剣の達人。通称シバラク先生。顔がでかい。
 魔神・戦神丸の操縦者。
 戦隊モノでいうところのイエロー役で、パワー重視の三枚目。単純、直情、おっちょこちょいと、冒険モノにはなくてはならない役どころを引き受ける。

 その顔ゆえにたびたびカバと呼ばれ、第六界層では本当にカバにされてしまう。また、ノリノリで女装して敵城に潜入するなど、お茶目な部分が目立った。
 しかし剣の技量はホンモノで、特に序盤ではワタルのよき師匠だった。

 中盤の山場ともいえる、クラマに対する断罪の剣は正に名シーン。
 大人の理と優しさを併せ持つナイス・ガイである。

 後半ではワタル、ヒミコといった子供たちを後ろから支える大人として、幻龍斎と名コンビを結成していた。

「ワタルよ、師として教えることは何もない! 後は存分に戦おうぞ!」



戦神丸
 シバラク先生が乗り込む侍風の魔神。
 カタナの二刀流と、背中のサスマタで戦う。

 呼び方はかなり独特で、なんと電話で呼び出す。
 番号は「1000-10-0(セン・ジュウ・マル)」
 言葉を喋るシーンは無かったものの、電話ではシバラク先生と会話をしているようなので、どうやら喋れるようだ。
 風邪をひいたり、道に迷って遅れたり、溶岩が熱くて駆けつけられなかったりと、搭乗者に似てなかなかお茶目。
 なお、電話線が切れていても気合が入っていれば呼べるらしい。
 ガッタイダーとの戦いでは龍神丸と同じようにカタナを振りかざして召還した。

 主役メカの龍神丸が後に控えている以上、なかなか活躍の場面が無く、登場して早々に必殺の「×の字斬り」を使うものの、敵に当たらず…というパターンが多かった。
 代わりに、龍神丸に撃たれた弾丸を二刀流で受け止めたり、サスマタを投げて龍神丸の窮地を救ったりと、援護では役に立っていた。

 第四界層ではボス魔神「ギーガン」とその部下、エーリアンの軍団を一人で迎え撃ち、見事に勝利。つばぜり合いの中、敵の尻尾による攻撃をもう片方のカタナで受け止めるシーンなどは格好良く、こと「剣技」に関してはワタル&龍神丸よりも一枚上手な印象を受ける。

 龍神丸不在の第五界層序盤では空神丸の背に乗って戦い、ヘルコプター軍団を一刀両断に切り捨てた。こういった意外なキャラの活躍が「ワタル」の面白さでもある。


・柳生シバラク流・×の字斬り
 二つのカタナを交差させ、一気に切り裂く。
 どうも踏み込みが足りないのか、敵に届かないことが多い。
 使っても敵に通用せず、敵の強さを見せ付ける……といったパターンが定着していただけに、ギーガン戦でこの技がビシッ!と決まったときのカタルシスは大きかった。




戦王丸
 戦いの中で大破した戦神丸がたった一話で復活した姿。
 基本的な武装は変わっていないが、かなりのパワーアップを果たしたらしく、空を飛ぶことも可能。
 ガッタイダーに止めを刺したのも戦王丸だった。
 ちなみに戦王丸という名前は電話中に戦王丸自らが名乗ったようだ。
 

・柳生シバラク流・火炎×の字斬り
 炎を纏った×の字斬り。ガッタイダーを倒した技。
 登龍剣に対する鳳龍剣に当たる技、と書くと、とても強そうだ。



渡部クラマ
 「ワタル」前半のシリアス部分を引っ張っていたキャラクター。
 鳥型魔神、空神丸の操縦者。

 ドアクダーの呪いによって鳥人間にされてしまい、元に戻してもらうためにドアクダーのスパイとしてワタルたちに接触した。
 しかしヒミコをはじめとするワタルたちのコミカルなノリに振り回され、これまた珍キャラ揃いのドアクダー部下たちにも振り回され、毎回毎回苦労ばかり。
 本人にも間の抜けたところがあり、うっかりワタルたちにヒントを与えてしまうことも。
 クールな二枚目半。

 なかなかワタルたちを始末できないことからドアクダー軍団で徐々に立場を失っていき、さらに自分を疑わず命がけで助けてくれるワタルたちとの間で板ばさみになって苦しむ。
 一度はシバラクたちを捕らえるものの、結局自らの手で救出し、ドアクダー軍団から離反。その後、全てを知ったシバラクの怒りに対し、自ら斬られることを望む。
 
「ダンナに斬られるなら、本望だよ」

 それでも自分を仲間と呼ぶワタルやヒミコに、クラマはついに涙する。

「ありがとうよ。ワタル。お前らに仲間と呼んでもらって……
 ……これでもう、思い残すことは何もねえ」

 そしてシバラクのカタナが振り下ろされる!
 …だが、そのカタナは優しくクラマの肩へ。シバラク先生の名シーンである。

 一旦は別れるものの窮地に陥るワタルたちの前に再び駆けつけ、本当の仲間に。ワタルやシバラクたちに許されたクラマは涙を流しながら走り出す。

「ちくしょう! なんだか知らねえけど、夕日に向かって走りてえんだよ!」

 そして…

「なあ、ワタル……仲間ってのは、いいもんだな……」

 この後、第四界層でもドラマは待っている。
 ワタルが第四界層で出会ったユーキに化けて敵が接近。その不自然さに気づいたクラマはワタルたちに警告するものの、本気にしてもらえず、さらに「スパイの勘か?」というシバラクの軽い一言に傷ついて飛び去ってしまう。

「裏切り者の言うことを信じろって言う方が無理だよな…」

 まだ吹っ切れてはいなかったクラマ。このあたりのドラマがまた面白い。
 結局、ユーキが偽者であったことがわかり、シバラクから謝罪を受けるクラマ。
 それに対するクラマの一言が感動的。

「いいって。済んだことさ」

 ああ、完全に吹っ切れたな、と、感じるシーン。
 シバラクの「過去の過ち」を許すことで自分の「過去の過ち」もまた、許されてよいのだと悟ったはず。
 これが大上段に構えたドラマでなく、さりげない台詞のやり取りだけで表現されている点がストーリーテリングの上手さ。大人になってから見直すと、子供の頃は気づかなかった言葉の意味に、気づき、余計に感動すること請け合い。

 その後、元の姿(意外にも美青年!)に戻り、口調まで変わってビックリ。
 パーティを離れるが、ドアクダーとの戦いを前に駆けつける。
 最終話では「周りの連中に鳥の方がいいと言われて」、鳥の姿にもどっていた。自由に戻れるもんなんだろうか?
 周りの連中と言うのがヒミコなのか視聴者なのかは不明。


空神丸
 クラマが操る、鳥型の魔神。
 敵魔神の援護が主な任務だったが、搭乗者がクラマであることを知られてはならないため、援護も必要最小限の援護でしかなく、龍神丸を倒すことは出来なかった。

 味方に加わってからも援護・サポートが主任務。
 龍神丸との「合体」は有名だが、戦神丸を背に載せたこともある。
 命がけで敵魔神を食い止めた結果、大破し、その後は魂となって龍神丸と合体する。
 武装は少なく、機関砲の他は体当たりなどの攻撃が精一杯だった。

・鷹波銃
 両翼に備えられた機関砲。
 それなりの攻撃力はあるようだが、やはり援護用の武装だろう。


空王丸
 クラマが再登場時に乗っていた、空神丸の後継機。
 空神丸の魂は龍神丸と合体しているので、全く別の魔神なのだろう。

 空神丸とは違い、人型に変形する機能も持つ。
 特に必殺技は持たないが、相手の投げた武器を受け止めて投げ返したり、龍王丸と共に投げ技を仕掛けたりと、相変わらずの名サポート役として活躍していた。



忍部ヒミコ
 本編のヒロイン……なのか?
 忍部一族のおかしら様で、凄腕の忍者。7歳。

 徹底したギャグキャラで、画面狭しと飛び回りながら常にギャグを披露していた。
 身体能力はおそらく作中ナンバーワン。奇妙な忍法も使い、もはやなんでもあり。
 ワタルたちが動物にされようが子供にされようが悪人にされようが彼女だけはなんともない。それも「まあ、ヒミコだから」と納得させてしまうのだから大したもの。
 ワタルたちの危機を幾度となく救い、それと同じくらいワタルたちに余計な苦労をさせた。
 
 そんなヒミコもクラマとの別れでは涙を見せる。スネたような口調で「前の鳥さんの方がず〜っとカッコよかったよ」と言い、その直後、泣きながらクラマに抱きつき「でも、今の鳥さんも大好きだぁ〜〜」は名シーン。

 そして虎王が死んだ(と、思われた)時の号泣は普段の彼女を知っているからこそ、余計に切なかった。

 紅一点ながらその年齢からか、主人公との恋愛関係にならないという点も特徴的。虎王との関係も、ヒミコはまだ恋愛などという風には考えていないだろう。
 主人公のワタルに特定のお相手が居ないのが「冒険」をメインにした「ワタル」のファンタジーアニメらしさを引き出していたように思える。
 オープニングアニメで共に龍の背に乗ったワタルとヒミコが、前だけを見てワクワクとした表情を浮かべているのシーンが全てを物語っている。

 声優は林原めぐみさん。こういうハッチャケたキャラからエヴァの綾波レイのようなクールキャラまで演じられる幅広さが凄すぎ。




忍部幻龍斎
 ヒミコの父親にして、忍者魔神・幻神丸のメインパイロット。
 ドアクダー打倒のため、単身、創界山に乗り込むが、第七界層までたどり着いたところでドアクダーに呪いをかけられ、猿にされてしまった。

 もとはなかなかのナイスミドルなのだが、忍び装束の中にYシャツとネクタイというあのイデタチはウケを狙っているんだろうか? 作中で誰も突っ込まなかったことが惜しまれる。

 影ながらワタルたちを助けていたが、ヒミコの危機についに姿を現し、そのまま仲間になる。
 立ち位置としてはクラマの抜けた穴を埋めるキャラで、彼の登場と共にオープニングからクラマの姿が消え、後期バージョンとなった。

 折り紙を使った独特の忍法などでワタルたちをサポートするが、博識なのかそうでないのかよくわからない、トボけたキャラクター。
 どちらかというと地味だが、いなければいないでちょっとさびしい。
 シバラク先生の名パートナーだった。



幻神丸
 幻龍斎が乗る、忍者タイプの魔神。
 幻龍斎とヒミコがペンダントをあわせると召還される。登場シーンではお約束的な音楽も持っており、戦神丸にちょっと差をつけている。
 仲間になった後はヒミコも搭乗するが、どちらかというと彼女は足を引っ張っていたようだ。

 初登場は第一界層。ボスのクルージングトムが乗るセカンドガンとの戦闘が終わった直後、落下して地面に叩きつけられそうになった龍神丸を助け、そのまま去っていった。
 続く第二界層でも、ボスのデスゴッド操るスケルバット戦で搭乗。スケルバットの口を幻部手裏剣で切り裂き、更に飛び蹴りでダメージを与えて去っていく。

 このままボス戦での助っ人キャラとして定着するのかと思われたが、第三、第四界層の変則ストーリーのあおりを食らった感じで出番がお預けとなり、第五界層で久々の登場となった。
 それも龍王丸が登場した直後の話であったため、龍王丸をあまり苦戦させるわけにも行かず、少々インパクトに欠ける合流となってしまった。

 仲間になってからはそれほど活躍の機会に恵まれず、最大のチャンスと思われたヘルライガー戦(ワタルが犬になってしまい、龍神丸を呼べない!)でも、「ペンダントをなくした!」というしょーもない理由でなかなか幻神丸を呼べず、ようやく呼び出しても放送時間の関係で、すぐに龍神丸にバトンタッチしてしまった。
 とはいえ、ワタルにかけられた呪いをとくために、敵と抱えたまま滝からダイブするド迫力の投げ技を決めるあたり、見せ場は作ったので、健闘はした方か。

 空を飛べるという点も地味ながらなかなかの利点。
 人間形態のままで空を飛べるのは味方魔神では幻神丸だけだった。

 武器は忍者刀のほか、いくつかの必殺技がある。

・幻部手裏剣
 背中につけた超大型の手裏剣を、勢いをつけて投げつける。
 ウチワのようにパタパタとはたいて煙を追い払うといった
 変則的な使われ方もあった。

・幻龍刀
 プラクションのギミックにもなっていた、足の裏の隠しナイフ
 蹴りと共に刀を繰り出す姿はなかなか格好良いが、
 ドンゴロには跳ね返されてしまった。





幻王丸
 一度死んだ幻神丸がたった一話で蘇った姿。
 見た目はかなり格好良く、そのまま他のアニメで主役がはれそうなほど。

 背負っている大型手裏剣が左右に分かれて翼のようになっている点、そして小型化された幻部手裏剣が両腕に付随しているのが特徴。

・幻王キック
 ガッタイダーの角を折った蹴り技。
 とりあえず技名を叫んでいたのでここに記載。
 そういう名前の必殺技なのか、ただの蹴りなのかは不明。
 幻龍刀のパワーアップ版であってくれると嬉しい。

・電光手裏剣(1)
 背中で翼のように分離している手裏剣を一つにあわせ、
 勢いをつけて投げる。
 幻神丸の幻部手裏剣に近い性質を持つと思われる技。
 ガッタイダーに対して使用。

・電光手裏剣(2)
 こちらは腕につけている手裏剣に電撃を込めて投げつける。
 技の名前は上のと同じだが、こちらは小型で使いやすそう。
 ドアクダーに向けてはなったが、簡単に防がれてしまった。



虎王
 ドアクダーの息子。
 ワタルがドアクダーの命を狙っているとは知らずに友達になり、その後、事実を知ると激しい敵対感情を抱くようになった。
 魔神・邪虎丸の操縦者。

 後半からの登場で、最初は単なる明るいお邪魔キャラだったのだが、第七界層でワタルの正体を知って以来の豹変振りは凄まじく、人相まで変わっていた。
 さらにドアクダーに育ての親、ドンゴロを殺され、自分まで道具としか思っていなかったことを知ると激怒してドアクダーに向かっていった。

 基本的に優等生のワタルたちと違い、「逆上して泣きながら剣を振るう」という感情をむき出しにした行動が印象的。
 ワタルと虎王が切り結ぶ中、魔界の赤い雷に照らされて、赤と黒のトーンに染まっていくシーンなど、画面に食い入るように見入ってしまった人も多いいはず。

 ヒミコに惚れていて、ヨメにしてやると一方的に宣言したが、ヨメの意味はあまりよくわかっていなかったようだ。
 だた、ヒミコに形見のマフラーを渡し、死を決意して邪虎丸に乗り込んだ時の独白は切ない。

「ヒミコ、本当にお前を、ヨメにしてやりたかったぞ。……さらばだ」

 ドアクダーとの戦いで一度は死亡したかと思われたが、聖龍妃に救われて呪いが解け、、元の姿、創界山の皇子、翔龍子に戻る。
 戻った直後は、虎王だった頃の記憶をほとんど失っていたようだが、ヒミコのことだけは「少しだけ覚えているような気がする」と、優しい言葉をかけていた。
 その後の総集編では完全に記憶を取り戻した模様。

 本編終了後もドラマCDや小説など、番外編の主役として活躍した人気キャラ。



邪虎丸
 虎王の駆る魔神。
 「チェンジ・タイガー」の掛け声で虎型に変形可能。
 登場からしばらくの間、まともな戦闘シーンは無かったが、第七界層の地下で機械の怪物相手に必殺の「タイガーソード」を披露。
 その後、龍王丸との戦いでは立て続けに必殺技を使用していた。
 〜〜丸という名前の魔神にしては珍しく横文字の技が多い点が特徴的。

・タイガーソード
 邪虎丸最大の必殺技。
 剣から巨大な虎の形をしたオーラを発射する。
 水晶の間で直接対決した際は、龍王丸の鳳龍剣と互角の威力だった。

・エビルタイガー・ミサイル
 直訳すると邪虎ミサイル。口からミサイルを発射する。
 飛んでいくミサイルに虎の顔が描かれているところがコミカル。
 シリアスなシーンでしか使われなかったので、やや浮いていた。

・タイガービーム・アタック

 球状のビーム弾を乱射する。
 龍神丸を倒そうとするツインカーメンへの妨害にも使われた。
 龍雷拳と互角の威力だった。

Back